5.8 解の平均値

平衡点 $ (d/c,a/b)$ 以外の第1象限内の任意の解 $ (x(t),y(t))$ は、 周期関数であることを示した。その周期を $ T$ として

$\displaystyle \overline{x}:=\frac{1}{T}\int_0^T x(t)\;\D t,\quad \overline{y}:=\frac{1}{T}\int_0^T y(t)\;\D t$ (5.10)

とおく。いわゆる(時間についての)平均値を意味する。実は

$\displaystyle \overline{x}=\frac{d}{c},\quad \overline{y}=\frac{a}{b}$ (5.11)

が成り立つ。自然できれい、 $ a$, $ b$, $ c$, $ d$ だけで定まるのは不思議14、 と感じられる (著者個人の感想だけれど、いかがでしょう)。


(F.4) を証明しよう。 まず微分方程式から

$\displaystyle \int_0^T\frac{x'(t)}{x(t)}\D t =\int_0^T \frac{ax(t)-bx(t)y(t)}{x(t)}\D t =\int_0^T (a-by(t))\D t.$ (5.12)

一方、周期性より $ x(0)=x(T)$ であるから、左辺について

$\displaystyle \int_0^T\frac{x'(t)}{x(t)}\Dt
=\left[\log x(t)\right]_0^T
=\log x(T)-\log x(0)=0.
$

(G.1) に代入して

$\displaystyle 0=\int_0^T\frac{x'(t)}{x(t)}\;\D t
=\int_0^T (a-by(t))\D t.
$

ゆえに

$\displaystyle \overline{y}
=\frac{1}{T}\int_0^T y(t)\;\D t=\frac{1}{T}\frac{a}{b}\int_0^T \D t=\frac{a}{b}.
$

同様にして次も得られる

$\displaystyle \overline{x}=\frac{d}{c}.
$

$ (x,y)$ の平均 $ (\overline{x},\overline{y})$ が平衡点であることは、 なるほどと感じる人が多いであろう (平衡点を通る解の平均値が平衡点そのものであることは明らかであるが、 そうでない場合にもそうなっている、ということである)。



桂田 祐史