4.4 力学系とは

(4.7) の右辺は $ t$ を含んでいないので、 $ \bm{f}$

$\displaystyle \bm{f}(\bm{x}):= \begin{pmatrix}x_2 \\ -\omega^2 x_1 \end{pmatrix}$ (4.10)

と定義して、(4.8) の代わりに

$\displaystyle \bm{x}'(t)=\bm{f}(\bm{x}(t)).$ (4.11)

とすることも可能である。

このように右辺が $ \bm{f}(\bm{x}(t))$ と、 $ t$ があらわに含まれていない微分方程式をじれいけい 自励系の微分方程式 (autonomous differential equation, 自律系と呼ばれることもある)、 あるいは力学系 (dynamical system) の微分方程式と呼ぶ。


(力学系という言葉は、有限次元の常微分方程式以外でも使われる (無限次元力学系, 離散力学系, …)。 その点は注意が必要である。)


(4.8) と比べると、 (F.4) は一般性が低いわけであるが、 実際上現れる (興味を持たれる、とでも解釈してもらえばよい) 多くの場合に微分方程式は (F.4) の形をしている。

自励系微分方程式の解 $ \bm{x}=\bm{x}(t)$ ( $ t\in[t_0,T]$) は、 $ \bm{x}$ 空間 (ここでは $ x_1x_2$ 平面) 内の曲線とみなすことが出来る。 それを解の軌道 (orbit) と呼ぶ。 正確には、$ \bm{x}_0$ に対して、 $ \bm{x}(t)$ を初期条件 $ \bm{x}(0)=\bm{x}_0$ を満たす (F.4) の解として、

$\displaystyle O_{+}(\bm{x_0})=\left\{\bm{x}(t)\relmiddle\vert t\in[0,\infty)\right\}
$

$ \bm{x}_0$ を通る正の半軌道、

$\displaystyle O_{-}(\bm{x_0})=\left\{\bm{x}(t)\relmiddle\vert t\in(-\infty,0]\right\}
$

$ \bm{x}_0$ を通る負の半軌道、

$\displaystyle O(\bm{x_0})=\left\{\bm{x}(t)\relmiddle\vert t\in\mathbb{R}\right\}
$

$ \bm{x}_0$ を通る軌道と呼ぶ。


     解曲線と軌道の違いを説明せよ。


軌道を考えるとき、$ x_1x_2$ 平面を相空間 (phase space) または相平面 (phase plane) とよぶ 11



桂田 祐史