4.3 1階正規形方程式への帰着

(F.8) は2階の方程式であるが、 ベクトル値関数を導入することで、1階の方程式に変換できる。 これは一般に適用可能な、必ずマスターすべき操作である。 (例えば、Euler法やRunge-Kutta法のような数値解法を適用するにも必要となる。)

$\displaystyle x_1(t):=x(t),\quad x_2(t):=x'(t),\quad \bm{x}(t):=\begin{pmatrix}x_1(t) \\ x_2(t)\end{pmatrix}$ (4.5)

とおくと

$\displaystyle \bm{x}'(t) =\begin{pmatrix}x_1'(t)\\ x_2'(t) \end{pmatrix} =\begi...
...a^2 x(t) \end{pmatrix} =\begin{pmatrix}x_2(t)\\ -\omega^2 x_1(t) \end{pmatrix}.$ (4.6)

ここで

$\displaystyle \bm{f}(\bm{x},t):= \begin{pmatrix}x_2 \\ -\omega^2 x_1 \end{pmatrix}$ (4.7)

とおくと、(F.8) は次のように表せる。

$\displaystyle \bm{x}'(t)=\bm{f}(\bm{x}(t),t).$ (4.8)

1階方程式になったことに注意しておこう。


多くの微分方程式は、以上と同様の手順で (4.8) の形に変換できる。

必修課題 4.3.1   力学で有名な強制振動 (forced oscillation, forced vibration) の微分方程式

$\displaystyle x''(t)+\omega^2 x(t)=F\sin\omega' t$ (4.9)

を1階正規形微分方程式に変換せよ ($ F$, $ \omega'$ は実数の定数、 $ \omega'$$ \omega$ と等しいかもしれないし、等しくないかもしれない)。 (これは後の課題4.5.2 を解くためにも必要である。)

必修課題 4.3.2   高校物理で取り上げられることの多い、(空気抵抗を無視した) ボール投げは、次の連立微分方程式に従う。

  $\displaystyle m x''(t)=0,$    
  $\displaystyle m y''(t)=-mg.$    

ここで $ m$, $ g$ は正定数である。 (物理的には、 $ t$ は時刻, $ x(t)$$ y(t)$ は時刻 $ t$ における位置を表す座標、 $ m$ はボールの質量, $ g$ は重力加速度 (SI単位系では、おおむね $ 9.80\;
\mathrm{ms^{-2}}$) を表す。) $ \bm{x}(t):=\left(x(t),y(t),x'(t),y'(t)\right)^\top$ とおき、1階正規系の微分方程式に変換せよ。

桂田 祐史