5.10.3 3種競争系 -- May-Leonardのモデル

May-Leonard は、[11] (1975年) の中で3種の生物が競争するモデルを提唱し、 解が興味深い挙動を持つことを示した。

$\displaystyle \left\{ \begin{array}{ll} \dfrac{\D N_1}{\D t}=N_1(1-N_1-\alpha N...
...[2ex] \dfrac{\D N_3}{\D t}=N_3(1-\alpha N_1-\beta N_2- N_3) \end{array} \right.$ (5.17)

$ \alpha$, $ \beta$ は正の定数である。

これを $ \Omega:=\left\{(N_1,N_2,N_3)\relmiddle\vert N_1\ge 0,
N_2\ge 0,N_3\ge 0\right\}$ で考察する。


この力学系の平衡点の安定性、 $ t\to\infty$ のときの解の漸近挙動について詳しいことが分かっている。 シミュレーションをすると楽しめる。


平衡点は8つあるが、何種が生き残っているかで分類すると次のようになる。

(a)
0種平衡点: $ (0,0,0)\in\Omega$.
Jacobi行列の固有値は $ 1$ ($ 3$重) であり、つねに不安定である。
(b)
1種平衡点: $ (1,0,0)$, $ (0,1,0)$, $ (0,0,1)\in\Omega$
Jacobi行列の固有値は $ -1$, $ 1-a$, $ 1-b$. $ \alpha>1$ かつ $ \beta>1$ ならば漸近安定。 $ \alpha$$ \beta$ のどちらか一方が $ 1$ 未満ならば不安定。
(c)
2種平衡点: $ \left(\frac{\alpha-1}{\alpha\beta-1},\frac{\beta-1}{\alpha\beta-1},0\right)$, $ \left(0,\frac{\alpha-1}{\alpha\beta-1},\frac{\beta-1}{\alpha\beta-1}\right)$, $ \left(\frac{\beta-1}{\alpha\beta-1},\frac{\alpha-1}{\alpha\beta-1},0\right)$.

これらが $ \Omega$ に属するには、$ \alpha$, $ \beta$

$\displaystyle (\alpha\beta>1\land \alpha\ge 1\land\beta\ge 1)\lor
(\alpha\beta<1\land\alpha\le 1\land \beta\le 1)
$

を満たすことが必要十分である。このとき、これら2種平衡点は不安定である。
(d)
3種平衡点: $ \left(\frac{1}{\alpha+\beta+1},\frac{1}{\alpha+\beta+1},
\frac{1}{\alpha+\beta+1}\right)\in\Omega$.
$ \alpha+\beta<2$ ならば漸近安定、 $ \alpha+\beta>2$ ならば不安定である。 $ \alpha+\beta=2$ の場合は後述する。

まとめ直すと

(a)
$ \alpha<1$ かつ $ \beta<1$
1種平衡点は不安定, 2種平衡点は$ \Omega$に属するが不安定, 3種平衡点は漸近安定。
(b)
$ \alpha>1$ かつ $ \beta>1$
1種平衡点は漸近安定, 2種平衡点は存在するが不安定, 3種平衡点は不安定。
(c)
$ \alpha>1$ かつ $ \beta<1$ かつ $ \alpha+\beta>2$
1種平衡点は不安定, 2種平衡点は$ \Omega$に属さない, 3種平衡点は不安定。
安定な平衡点は存在しない。1種平衡点を巡回する解が存在する。
(d)
$ \alpha>1$かつ$ \beta<1$ かつ $ \alpha+\beta<2$
1種平衡点は不安定, 2種平衡点は$ \Omega$に属さない, 3種平衡点は漸近安定。
(e)
((c) の裏返し)
$ \alpha<1$ かつ $ \beta>1$ かつ $ \alpha+\beta>2$
1種平衡点は不安定, 2種平衡点は$ \Omega$に属さない, 3種平衡点は不安定。
安定な平衡点は存在しない。1種平衡点を巡回する解が存在する。
(f)
((d) の裏返し)
$ \alpha<1$かつ$ \beta>1$ かつ $ \alpha+\beta<2$
1種平衡点は不安定, 2種平衡点は$ \Omega$に属さない, 3種平衡点は漸近安定。

(c), (e) の場合に、初期値が平衡点でなければ、 3つの1種平衡点(の近く)を巡回する解が存在する。 一見周期解のようにも見えるが、 だんだん1種平衡点の近くに逗留する時間が長くなる。

上の不等式は等号なしの場合であるが、 等号つきの場合にも重要なものがある。 特に $ \alpha+\beta=2$ のとき、

$\displaystyle N(t):=N_1(t)+N_2(t)+N_3(t),\quad p(t):=N_1(t)N_2(t)N_3(t)
$

とおくと、 $ t\to\infty$ のとき

$\displaystyle N(t)\to 1,\quad p(t)\to C:=\frac{p(0)}{N(0)^3}
$

が証明できる。 $ N_1+N_2+N_3=1$ $ N_1 N_2 N_3=C$ の共通部分は閉曲線で、 これが limit cycle となる。

May-Leonard のモデルを修正した研究として Jaramillo-Mrad-Stepien [12] がある。

桂田 祐史