(G.1) の平衡点 の安定性の判定法として、 次の定理が使われることが非常に多い。
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「ヤコビ行列って何ですか?」 (学生が持っている教科書の索引にヤコビ行列がない…ぶつぶつ ) , , は微分可能とするとき、 の におけるヤコビ行列とは、 型の 行列
力学系 においては であることに注意しよう (微分方程式の左辺は 次元, 右辺は 次元で、それが一致するから)。 ゆえに は 次正方行列で、 (重複度を込めて数えて) 個の固有値を持つ。 行列 の成分は実数であるが、固有値には虚数が現れることもある。
この定理が、 の場合にも使えることを注意しておく。 のとき、 の におけるヤコビ行列は、 の における微分係数 そのものである。 またその固有値は、 (これは実数) である (一般に実数 を、 型の実行列とみなすとき、 が に対して成り立つので、 は の固有値で、 が固有ベクトルである。)。
ゆえに、定理を の場合に限定すると、 「 ならば は漸近安定、ならば は不安定」 ということになる。
定理が成り立つのを納得したい、という人に向けて: が で微分可能であるとは
(G.2) |
これは定数係数線形常微分方程式と呼ばれる方程式である。 これについての “常識的事項” を知ると、 上の定理が感覚的に納得できると思われるので、 次項にまとめておく。