2.2.3 LU分解

行列 $ A$ に対して、

$\displaystyle A=L U,$   $\displaystyle \mbox{$L$ は下三角行列}$$\displaystyle ,$   $\displaystyle \mbox{$U$ は上三角行列}$

をみたす $ L$, $ U$ が存在するとき、 $ L$$ U$ の組を $ A$LU 分解とよび、 $ L$$ U$ の組を求めることを $ A$LU 分解する、という。


以下、後の内容を予告する。

任意に与えられた行列 $ A$ に対して、 その LU 分解はいつも存在するとは限らない (定理 2.7 で示すように、 $ A$ が正則である場合は、 $ A$ のすべての主座小行列式4$ \ne 0$ であることが LU 分解が存在するための必要十分条件である)。 しかし $ A$ が正則であれば、 適当な置換行列5 $ P$ を 左からかけた $ P A$ を LU 分解することができる ($ P A$$ A$ の行ベクトルを入れ替えたもの)。


正則行列 $ A$ が LU 分解できるとき、 分解の仕方を

(1)
$ L$ の対角成分はすべて $ 1$ (すなわち $ L$ は単位下三角行列)
(2)
$ U$ の対角成分はすべて $ 1$ (すなわち $ U$ は単位上三角行列)
のいずれかに限定すると、分解は一意的に定まる (命題 2.9)。



桂田 祐史