以下、行列
に対して、
で、
次の主座小行列を表す:
蛇足ながら、数値計算言語の MATLAB では、
a という行列に対して、
a(1:j,1:j) という式で
次の主座小行列を表せる。
証明.
行列を

行,

列のところで線を引いてブロックわけする:
(

の右上のブロック、

の左下のブロックは零行列ということを主張している。)
であるから、
正則

が LU 分解

を持つとする。

より、

と

も正則である。

より、

(

).

の逆行列を

とすると、

は下三角で、

が成り立つから、前半を用いて、
これから

.
逆に
(
) ならば
は LU 分解できる
ことを示すには、Gauss の消去法によって具体的に LU 分解を構成してみせる。
証明.

についての帰納法による。

のとき、

より、
第 1 列の対角線より下を掃き出すことができる。実際
とおくと、
ゆえに

のとき確かに成り立つ。
のとき成り立つと仮定して、
とする。
が
(
) を満たすと仮定する。
特に
(
) であり、
帰納法の仮定より Gauss の消去法の前進消去過程は
段まで実行できる。
すなわち行に関する基本変形を表す下三角の基本行列の積である
下三角行列
が存在して、
これから
このとき
仮定より

であるから、

.
ゆえに第

列の対角線より下も掃き出すことができる。
すなわち Gauss の消去法の前進消去過程は

段まで実行できる。
証明.
前半は補題
2.5 から明らか。

が正則であるならば、

も正則であることに注意して、

とおけば

.

は
単位下三角であるから

であるので、

.
以上をまとめると、次の定理が得られる。
この定理の、簡単だが応用上重要な系として、次のものがある。
証明.
よく知られているように、対称行列

が正値であるためには
が成り立つことが必要十分である。これを思い出せば明らか。
なお、正値対称行列の LU 分解としては、
Cholesky 分解が重要である。
これについては、桂田 [1] などを見よ。
LU 分解の一意性についても片付けておこう。
証明.

が正則であることから

も正則である。
したがって
左辺は単位下三角行列の積であるから単位下三角行列であり、
右辺は上三角行列の積であるから上三角行列である。
ゆえにこの等式の両辺は、単位下三角行列かつ上三角行列であるので、
実は単位行列

に等しい。これから
が得られる。
とブロック分けすると
これから
これは
の LU 分解となっているので
やり残し「任意の正則行列
に対して、
ある置換行列
が存在して、
は LU 分解できる」を証明したい。
桂田 祐史