2.4.1 疎性が保存されるか

$ A$$ A=LU$ と LU 分解可能なとき、 $ A$ の疎性は $ L$$ U$ に「遺伝する」、 つまり $ A$ が疎行列ならば、 $ L$$ U$ も疎行列であることは比較的容易に分かる (より具体的には「バンド幅」 -- まだ説明していない概念9だが -- は増えない)。

これに対して、$ A$ が疎行列であっても、 $ A^{-1}$ が疎行列になるとは限らない (比較的有名であるので例は後回しにする -- なお、 次の例 2.2 もその例だと言えないこともない)。 $ L^{-1}$ も疎行列になるとは限らないことを例で示しておこう。


\begin{jexample}[$L$ が疎行列であっても $L^{-1}$ はそうとは限...
...1
\end{array} \right)
\end{displaymath}を示している。\qed
\end{jexample}

この例の問題で $ L$ を記憶しておいて、 (4) で解を求めるやり方と、 $ L^{-1}$ を計算して $ b=(b_i)$ にかけて解を求めるやり方を比べてみるのは 有益である。 前者は、$ n$ に比例する計算量ですむ (疎性を有効に活かせた) が、 後者は、行列 $ L^{-1}$ とベクトル $ b$ の掛け算だけで、 $ n^2$ に比例する計算量となってしまう (疎性を活かせなかった)。



桂田 祐史