3.1 Waller に書いてあったこと (数学的には「予想」)

正方形領域 $ \Omega=(0,1)\times(0,1)$ における

$\displaystyle -\Laplacian u=\lambda u,\quad
\frac{\rd u}{\rd n}=0
$

の固有関数は

$\displaystyle \cos m\pi x\cos n\pi y$   ( $ m,n=0,1,2,\cdots$ )

$ m,n\in\N\cup\{0\}$ に対して、

$\displaystyle \varphi_{mn}(x,y)=
\left\{
\begin{array}{ll}
\cos m\pi x\cos m...
...\cos n\pi y-\cos n\pi x\cos m\pi y & \text{($n>m\ge 0$)},
\end{array} \right.
$

$\displaystyle M:=\left\{\varphi_{mn}; m,n\in\N\cup\{0\}\right\}
$

とおく。 以下のことは容易に証明できる。
(I)
$ M$ は完全直交系である。
(II)
$ \varphi_{mm}$ の節線 $ \{(x,y);\varphi_{mm}(x,y)=0\}$ は完全な対称性を持つ (二面体群 $ D_4$ の任意の要素に関して 不変)
(III)
$ m\ne n$ , $ m$ $ n$ は共に偶数か共に奇数とするとき、 $ \varphi_{mn}$ の節線は完全な対称性を持つ。 それにもかかわらず $ \lambda_{mn}=\lambda_{nm}$ .
(IV)
$ m\ne n$ , $ m$ $ n$ は一方が偶数で他方が奇数とするとき、 $ \varphi_{mn}$ の節線は完全な対称性を持たない。 $ 90^\circ$ の回転について不変でなく、 $ \varphi_{nm}$ の節線になる。 $ \lambda_{mn}=\lambda_{nm}$ .

一方、板の固有値問題については、固有関数の族 $ P=\{\Phi_{mn}; m,n\in\N\cup\{0\}\}$ で、以下の性質を持つものが存在する、 と Waller [22] には書いてあるように読める。

(i)
$ P$ は完全直交系である。
(ii)
$ \Phi_{mm}$ の節線 $ \{(x,y);\Phi_{mm}(x,y)=0\}$ は完全な対称性を持つ (二面体群 $ D_4$ の任意の要素に関して不変)
(iii)
$ m\ne n$ , $ m$ $ n$ は共に偶数か共に奇数とするとき、 $ \varphi_{mn}$ の節線は完全な対称性を持つ。 $ \lambda_{mn}\ne\lambda_{nm}$ .
(iv)
$ m\ne n$ , $ m$ $ n$ は一方が偶数で他方が奇数とするとき、 $ \Phi_{mn}$ の節線は完全な対称性を持たない。 $ 90^\circ$ の回転について不変でなく、 $ \Phi_{nm}$ の節線になる。ゆえに対応する固有値は重根である。 $ \lambda_{mn}=\lambda_{nm}$ .

このことを数学的に証明し、 (III) と(iii) の相違の原因を理解したい。

桂田 祐史
2017-04-29