2.2 今後の見通し

関係 (17) があるので、 $ S$, $ I$, $ R$ のうちの2つだけを考えれば十分である。 ここでは $ S$$ I$を考えることにする。

\begin{subequations}% 2021-02-23 00:27の式群
\begin{align}&\frac{\D S}{\D t}=...
...), &\frac{\D I}{\D t}=\beta S(t)I(t)-\gamma I(t).\end{align}\end{subequations}

この微分方程式は非線形であることもあり、 式変形で解を求めることはできない (と思われる。証明出来るかは知らないが。)。

しかし、任意の初期値 $ (S(0),I(0))$ に対して、 初期値問題の解 $ (S(t),I(t))$ が一意的に存在することは、 常微分方程式の初期値問題の解の一意存在定理から容易に分かる。

$ (S(t),I(t))$ は式変形で求められないが、実は解軌道の方程式は簡単に得られ、 それにより解の性質が色々分かる: $ S(0),I(0)>0$ であれば、 $ (S(t),I(t))$ は第1象限に止まり、 $ S$ は単調減少し、ある正数 $ S_\infty$, $ S_{-\infty}$ が存在して

$\displaystyle \lim_{t\to\infty}(S(t),I(t))=(S_\infty,0),\quad
\lim_{t\to-\infty}(S(t),I(t))=(S_{-\infty},0).
$

さらに閾値原理と呼ばれる近似法則の紹介もする。

微分方程式 (3a), (3b) の右辺には $ t$ が陽には現れない、すなわち

$\displaystyle \frac{\D\bm{x}}{\D t}=f(\bm{x})
$

の形をしている。 (3a), (3b) は、 いわゆる力学系ということになる。 一般に力学系においては、平衡点とその安定性を調べる、 というのが定番の分析である。それをやっておく。 (今の場合、それで理解が非常に深まる、ということにはならないが、 知っておくべきである)。



桂田 祐史