感染症の数理をじっくり勉強しようという人には、 有名なSIRモデルについてのていねいな説明が載っている 佐藤 [8] から読み始めるのがお勧めである。
この節では [8] に従って、SIRモデルの紹介をする。
言葉の説明から始める。
感染症にかかると回復せずに死亡する場合もあるし、
回復する前に発見されて隔離される場合もある。
回復者、死亡者、隔離者をまとめて除去者と呼び、
その数を と表す、とする立場もある。
空間分布を考えず、人数の時間変化を考えることにして、
時刻 における感受性者、感染者、回復者の数を
,
,
で表すことにする。
適当な仮定をおくと、次の連立微分方程式が導かれる。
ここで ,
は正定数である。
(1a), (1b), (1c) を SIR モデルと呼ぶ。
これは、 1927年に出版された William Ogilvy Kermack と Anderson Gray McKendrick の論文 [9] で提案されたので、 Kermack-McKendrick モデルとも呼ばれている。
ちなみに [9] では、
,
,
をそれぞれ
,
,
で表し、
“the number of individuals still unaffected”,
“the total number who are ill”,
“the number who have beeen removed by recovery and death”
と説明している。
すぐ分かるように SIR モデルでは総人口が一定である (死亡することを考えない、あるいは死者も数えるから、当たり前)。
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を単に
と表すと
桂田 祐史