C..1 とりあえず要点を学ぶ

$ p$, $ q$ を複素数の定数とする。 (実数だけで話が完結する場合もあるが、煩雑になるので、 まずは $ p$, $ q$ が複素数であり、解も複素数値の関数を認めた場合について述べる。)

$\displaystyle x''(t)+p x'(t)+q x(t)=0.$ (C.1)

2次方程式

$\displaystyle \lambda^2+p\lambda+q=0$ (C.2)

を微分方程式 (C.1) の特性方程式と呼ぶ。 特性方程式の根 (解) のことを特性根と呼ぶ。


\begin{jtheorem}% latex2html id marker 1841
[特性根が相異なる場合]
$p...
...}+C_2 e^{\beta t}$\ と一意的に表される。
\end{enumerate}\end{jtheorem}

カタい言い回しをすると、 「(C.1) の解空間 (解全体の集合) は、 2次元の線形空間で、 基底 (解の基本系)として $ e^{\alpha t}$, $ e^{\beta t}$ が取れる」となる。 特に

   (C.1) の解空間$\displaystyle =
\left\{C_1e^{\alpha t}+C_2e^{\beta t}\relmiddle\vert
C_1,C_2\in\mathbb{C}\right\}
$

である。


\begin{jtheorem}% latex2html id marker 1866
[特性根が重根となる場合]
...
..._2 t e^{\alpha t}$\ と一意的に表される。
\end{enumerate}\end{jtheorem}

$ p$, $ q$ が実数の場合、特性根$ \alpha$, $ \beta$が虚数ならば、 それらは互いに共役複素である。すなわち、 実数 $ a$, $ b$ ($ b\ne 0$) が存在して

$\displaystyle \alpha=a+ib,\quad \beta=a-ib.
$

このとき (C.4) が一般解であるのは すでに述べた通りだが、

$\displaystyle x(t)=C_1 e^{a t}\cos bt+C_2 e^{a t}\sin bt$   ($ C_1$, $ C_2$ は任意定数) (C.3)

も(C.1) の一般解である。 特に $ C_1$, $ C_2$ として実数のみを選ぶと、 (C.1) の実数値関数の解すべてを 表すことができる。


\begin{jtheorem}% latex2html id marker 1893
[実係数で、特性根が虚数...
..._2 e^{a t}\sin bt$\ と一意的に表される。
\end{enumerate}\end{jtheorem}

以上の話は、一般の自然数 $ n$ に対する $ n$ 階方程式

$\displaystyle x^{(n)}+p_1 x^{(n-1)}+\cdots+p_{n-1}x'+p_n x=0$   ($ p_1$, $ \cdots$, $ p_{n-1}$, $ p_n$ は定数) (C.4)

の場合まで一般化される。

例えば $ n=1$ の場合、すなわち

$\displaystyle x'+p x=0$   ($ p$は定数) (C.5)

の場合は、特性方程式は $ \lambda+p=0$ であるから、 特性根は $ \lambda=-p$ であり、

$\displaystyle x(t)=C e^{-p t}$   ($ C$ は任意定数)$\displaystyle .$

は (C.9) の一般解である。


例えば $ n=3$ の場合、すなわち

$\displaystyle x'''+p x''+q x'+r x=0$   ($ p$, $ q$, $ r$ は定数) (C.6)

の場合、特性方程式は $ \lambda^3+p\lambda^2+q\lambda+r=0$. その根を $ \alpha$, $ \beta$, $ \gamma$ とする。
(i)
$ \alpha$, $ \beta$, $ \gamma$ がすべて相異なるならば

$\displaystyle x(t)=C_1 e^{\alpha t}+C_2 e^{\beta t}+C_3 e^{\gamma t}$   ($ C_1$, $ C_2$, $ C_3$ は任意定数)

は (C.9) の一般解である。
(ii)
$ \alpha=\beta\ne\gamma$ (二重根の場合) ならば

$\displaystyle x(t)=C_1 e^{\alpha t}+C_2 t e^{\alpha t}+C_3 e^{\gamma t}$   ($ C_1$, $ C_2$, $ C_3$ は任意定数)

は (C.9) の一般解である。
(iii)
$ \alpha=\beta=\gamma$ (三重根の場合) ならば

$\displaystyle x(t)=C_1 e^{\alpha t}+C_2 t e^{\alpha t}+C_3 t^2 e^{\alpha t}$   ($ C_1$, $ C_2$, $ C_3$ は任意定数)

は (C.9) の一般解である。
(iv)
$ \alpha=a+ib$, $ \beta=a-ib$ ( $ a,b\in\mathbb{R}$, $ b\ne 0$) ならば

$\displaystyle x(t)=C_1 e^{a t}\cos bt+C_2 e^{a t}\sin bt+C_3 e^{\gamma t}$   ($ C_1$, $ C_2$, $ C_3$ は任意定数)

は (C.9) の一般解である。

桂田 祐史