1.3 ビュルギ

Jobst Bürgi (1552-1632, スイスの...) は1603-1611の間に対数表を作り、 1620年に刊行した (“Tafeln arithmetischer und geometrischer Zahlenfolgen mit einer gründlichen Erläuterungen, wie sie zu verstehen sind und gebraucht werden können”)。

図 1: ”The Inventor of Logarithms” [] による

グレイゼル [9] によると、

とのことである。

グレイゼルによると、ビュルギは $ n$ を動かしたときの

$\displaystyle 10^8(1+10^{-4})^n
$

の表を与えていて、

$\displaystyle 10^8\left(1+10^{-4}\right)^{n^\ast}\kinji 10^9
$

となるまで計算している、それは「完全な赤い数 $ 23027002$」までであり、 2億回の計算をした、と書いてある。 しかしこれは何だかよく分からないぞ。

$\displaystyle \left(1+10^{-4}\right)^{n^\ast}\kinji 10
$

を解くと

$\displaystyle n^\ast\log_{10}\left(1+10^{-4}\right)=\log_{10}10=1
$

であるから

$\displaystyle n^\ast=\frac{1}{\log_{10}\left(1+10^{-4}\right)}=23027.002203\cdots
\kinji 23027.
$

はてさて何の間違いだろうか?

グレイゼル [9] の本に表の写しが載っていて、 それによると1ページに $ 50\times 8=400$ の数が載せられている (らしい)。 $ n^\ast=23027$ 個の数値を載せるには、 単純計算で $ 58$ ページあれば良いが1、 この $ 10^3$, $ 10^4$ 倍の規模の数表は考えにくい。変だなあ。

大体2億回の掛け算を7,8年でするとなると、1年に2500万回の掛け算。 1日に10万回近い掛け算。むちゃくちゃだな。 (私の結論: グレイゼルは何か勘違いをしている。) 全部で2万3000回ならば、4桁作業量は下がって 1 日 10 回程度だから、 まあ信じられる数値ではある。

ビュルギについて、 http://www.micheloud.com/FXM/LOG/index.htmで読んだことだが、 1588年には対数の考え方を手紙に書いているということである。 なお、このWWWページには対数表の1ページが載っている (ちょうどグレイゼルに載っているのと同じ部分だが、 1ページ全部見えているので情報量は多い)。

ちなみにカジョリ [14] には、
…この表は、

$\displaystyle y=10^8(1.0001)^x
$

を与える。たとえば $ 10^8\cdot(1.0001)^{530}=100531380$
と書いてあるのだが、 $ 10^8(1.0001)^{530}=105442685.107\cdots$, $ 10^8(1.0001)^{53}=100531380.3455\cdots$ であるから、 カジョリも表の読み方が間違っている ($ 530$ 乗でなくて $ 53$ 乗だ)。

桂田 祐史
2019-03-01