解答への試み

平面 $ {\rm Span}(v)$ 上の点 $ x$

$\displaystyle x=\lambda v_1+\mu v_2,\quad \lambda,\mu\in\R
$

と書けるので、直交性の条件

$\displaystyle (x-u,v_i)=0$   $\displaystyle \mbox{($i=1,2$)}$   i.e.$\displaystyle \quad
(x,v_i)=(u,v_i)$   $\displaystyle \mbox{($i=1,2$)}$

から連立1次方程式
  $\displaystyle \lambda(v_1,v_1) + \mu(v_2,v_1)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (u,v_1)$
  $\displaystyle \lambda(v_1,v_2) + \mu(v_2,v_2)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (u,v_2)$

を得る。行列表現は

$\displaystyle \left(
\begin{array}{cc}
(v_1,v_1) & (v_2,v_1) \\
(v_1,v_2) & (v...
...{array}\right)
=
\left(
\begin{array}{c}
(u,v_1) (u,v_2)
\end{array}\right).
$

Schwarz の不等式の等号成立条件を吟味すると、 この連立1次方程式の係数行列は正則であることが分かるが 2.2$ \lambda$ , $ \mu$ は複雑な式になってしまう。 しかし、実はうまい解決策がある。 それは後のお楽しみ (Gram-Schmidt の正規直交化を導入してから)。 $ \qedsymbol$


\begin{jdefinition}[線型部分空間への正射影]
$\R^n$\ の線型部分...
...は \textbf{直交射影}
(orthogonal projection) と呼ぶ。
\end{jdefinition}

実はより一般の部分集合 $ M$ への正射影も定義できるが、それについては後述 する。

\begin{jproposition}[正射影の特徴付け 「正射影は最も近い点」]...
...ert x-y\Vert=\dsp\min_{v\in V}\Vert x-v\Vert$.
\end{enumerate}\end{jproposition}
[(i)$ \Then$ (ii)] $ y$ $ x$ $ V$ への正射影であるとする。 任意の $ z\in V$ に対して、$ 3$ $ x$ , $ y$ , $ z$ を頂点とする三角形を考える。 これは $ y$ が直角をはさむ頂点となる直角三角形になる。 実際、$ y-z\in V$ であるから、直交性の仮定から $ (x-y,y-z)=0$ . ピタゴラスの定理から

$\displaystyle \Vert x-z\Vert^2=\left\Vert(x-y)+(y-z)\right\Vert
=\Vert x-y\Vert^2+\Vert y-z\Vert^2.
$

ゆえに

$\displaystyle \Vert x-z\Vert^2\ge \Vert x-y\Vert^2,$   $\displaystyle \mbox{等号は $\Vert y-z\Vert=0$ すなわち $z=y$ のとき}$$\displaystyle .
$

これから

$\displaystyle \Vert x-y\Vert=\min_{z\in V}\Vert x-z\Vert.
$

[(ii) $ \Then$ (i)] $ h\in V$ を任意にとり、 $ f\colon \R\to\R$

$\displaystyle f(t)=\Vert x-(y-th)\Vert^2=\Vert x-y+t h\Vert^2$   $\displaystyle \mbox{($t\in\R$)}$

で定める。 $ (y-th)\in V$ であるから、仮定より $ f$ 0 で最小になる。 ゆえに $ f'(0)=0$ であるが、

$\displaystyle f(t)=\Vert x-y\Vert^2+2t(x-y,h)+t^2 \Vert h\Vert^2
$

であるから、

$\displaystyle (x-y,h)=0.
$

これが任意の $ h\in V$ に対して成り立つと 言うことは $ x-y\perp V$ を意味している。$ \qedsymbol$

例題 1 の内容を命題としてまとめておこう。

\begin{jproposition}[1次元部分空間への正射影]
$v\ne 0$\ とすると...
...aymath}
w=\frac{(u,v)}{(v,v)}v
\end{displaymath}である。
\end{jproposition}

この $ 1$ 次元部分空間への正射影を用いると、 Schwarz の不等式の別証明を得る。 個人的には Schwarz の不等式の意味がよく分かる証明だと思っている。

桂田 祐史
2017-04-30