1960 年代まで主流であった Jacobi 法について簡単に説明しよう。 これは実対称行列を 次元の回転変換により変形していって、対角成分以外 の成分の絶対値を小さくしていくというものであり、行列のサイズ が 程度の小さなものであれば現在でも実用的である。
なぜ「対角成分以外の成分の絶対値を小さくしていく」のか?これについて 説明しよう。まず次の定理は簡単であるが重要である。
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方程式 の第 成分を書くと
これから
(以下 を単に と書くことにする。) よって
したがって .
つぎに
とおくと、 に対する円板は
である。 の固有値は に ついて連続的に変化し、 のとき にそれぞれ重 複個数だけある。 を増加させれば、いくつかの円板が拡大して合流するが、 個の が合流すれば、その中に の 個の固有値 が存在する。ゆえに に達したとき、 の 個が連結成分を なせば、その中に の 個の固有値が存在する。
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なぜか今のカリキュラムの盲点となってしまって、 紹介されることがないが、 「代数方程式の根は方程式の係数の連続関数である」 行列の固有方程式の係数は、行列の成分の連続関数であることは明らかだから、 「行列の固有値は行列の成分の連続関数である」。 Gerschgorin の定理はあざやかに連続性を見せてくれる。