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11.1.1 行列についての色々な同値関係

  1. $ A,B\in M(n;\C)$ に対して、

    $\displaystyle A\sim_s B\quad \DefIff\quad \exists U\in U(n;\C)$   s.t.$\displaystyle \quad
U^\ast A U=B\quad(U^{-1}A U=B).
$

    代表元としては Schur 標準形というのか?上三角に出来る (もとが対称であれば対角行列に出来る)。
    実数バージョンもある。
  2. (今回は関係ない) $ A,B\in M(n;\C)$ に対して、

    $\displaystyle A\sim_{\text{特}}B
\DefIff
\exists U_1,U_2\in U(n;\C)\quad\text{s.t.}\quad
U_2^\ast A U_1=B.
$

    特異値分解に対応。
  3. $ A,B\in M(n;\C)$ に対して、

    $\displaystyle A\sim_s B$   ($ A$ $ B$ は相似)$\displaystyle \DefIff \exists P\in GL(n;\C)$   s.t.$\displaystyle \quad P^{-1}A P=B.
$

    代表元としては Jordan 標準形が有名。実数の範囲で考えると、 有理標準形とかいうのになる?
    「基底の取り替えでなるべく簡単な行列にする」
  4. $ A$ $ B$ $ n$ 次の実対称行列とするとき、

    $\displaystyle A\sim_c B$   ($ A$ $ B$ は合同)$\displaystyle \DefIff
\exists P\in GL(n;k)$   s.t.$\displaystyle \quad P^T A P=B.
$

    代表元として $ \diag(\overbrace{1,\cdots,1}^p,\overbrace{-1,\cdots,-1}^q,
0,\cdots,0)$ が取れる。 伊理先生は ``Sylvester 形'' と呼んでいた。 これは符号数 $ (p,q)$ で指定できることに注意。
    「2次形式を正則線形変換で平方完成 (対角化) する」
    Hermite 行列版がある。
  5. $ k=\R$ or $ \C$ とする。 $ A,B\in M(n;k)$ に対して、 $ A\sim_r B$ $ \DefIff$ $ \exists P,Q\in GL(n;k)$ s.t. $ Q A P=B$ .
    代表元として $ \diag(\overbrace{1,\cdots,1}^{r},0,\cdots,0)$ が取れる ($ 1$ の個数 $ r$ は実は $ \rank A$ に等しい, 伊理先生はこの代表元を「階数標準形 (rank normal form) と呼んでおく」)。

実対称行列や Hermite 行列に対して、 直交変換や unitary 変換で相似変換する話は、 1, 3, 4 にまたがっている話になる。

2 はある意味で 1 を緩くしたものである。

3, 4 もある意味で 1 を緩くしたものである。 $ U\in U(n)$ $ G\in GL(n)$ に変えるのだが、そのときに $ U^\ast(=U^{-1})$ $ P^T$ にするか、$ P^{-1}$ にするか。

5 はとても緩い。 例えば実対称行列について、$ A\sim_c B$ $ \THEN$ $ A\sim_r B$ .

そうか、実対称行列について、 直交変換に限った 1 (あるいは3) をして、 一般の正則線形変換で 4 をして、 それから 5 をして、 ということで、標準形が、

$\displaystyle \diag(\lambda_1,\cdots,\lambda_n)\quad
\left\{
\begin{array}{ll...
...1\le j\le p+q$)}\\
\lambda_j=0 & \text{($p+q< j\le n$)}
\end{array} \right.
$

から

$\displaystyle \diag(\overbrace{1,\cdots,1}^p,\overbrace{-1,\cdots,-1}^q,0,\cdots,0)
$

を通じて

$\displaystyle \diag(\overbrace{1,\cdots,1}^{\rank A},0,\cdots,0)
$

となるわけだ。もう $ p+q=\rank A$ は当たり前に見えて来る。


書くとすごくゴチャゴチャしている感じがするけれど、 頭の中でやると訳が分からなくなるのは仕方ないのが分かる。


絵的に書くと

$\displaystyle Q^T A Q=B\quad\THEN\quad P^T A P=B\quad\THEN\quad Q A P=B.
$

$\displaystyle A\sim_s \diag(\lambda_1,\cdots,\lambda_n)
\sim_c \diag(1,\cdots,1,-1,\cdots,-1,0,\cdots,0)
\sim_r \diag(1,\cdots,1,0,\cdots,0).
$


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桂田 祐史
2015-12-22