5.3 大石スクールの研究

大石進一は、 最初力学系の問題を解くために精度保証付き数値計算を使う研究からスタートし、 続いて連立1次方程式の解の精度保証付き数値計算で独創的な研究を行なった。

Oishi-Rump [12] (2002) は一つの到達点で、 読むべき論文であろう。

初期の研究の大まかな流れを知るには、 本人の回顧録である大石 [13] (2008) を見るとよい。

??年頃から、 中尾スクールのテリトリーである、 偏微分方程式の解の精度保証付き数値計算の分野に乗り込んできた。

非常にたくさんのお弟子さんを育てて来た。また共同研究も多い。 特に高安亮紀の偏微分方程式の解の精度保証付き数値計算に関する研究は、 注目に値する。

大石スクールの研究の集大成が大石他[14] である。


一方で、 連立1次方程式の解の精度保証付き数値計算が結局のところどうなったのか、 はっきりしない。

荻田・大石 [15] を読めば良い?その後は? 荻田論文の追っかけが必要なのかな?


以下のまとめはあまり自信がないが、作業仮説として書いておく。

結局のところ、 大石スクールの連立1次方程式の解の精度保証付き数値計算は、 近似解の区間演算による残差評価と、 逆行列のノルム評価に基づく誤差評価の定理 (定理 [*]) の利用を基本原理としている。

近似解を求める数値解法は、いわゆる後退安定性があるものであれば、 残差は小さいことが期待できる。 実際に近似解を求めた上で、残差を評価する。

逆行列のノルム評価については、 LU分解 (特別な場合として Cholesky分解も含む)、 QR分解等の分解を利用するものが多い (例外は...)。

残差評価も、逆行列のノルム評価も、 ともに(直接・間接に) 計算して求めているという意味で、 いわゆる事後誤差評価 (a posteriori error estimates) であると言えるだろう。

桂田 祐史
2020-09-03