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E.1.2.0.1 例題8-1

次の力学系の流れの様子を $ -4\le x,y\le 4$ で描きなさい:

$\displaystyle \frac{d}{dt}{x \choose y}={y\choose -6x-y-3x^2}. \leqno{(2)} $

まず最初に平衡点を求めましょう。方程式の右辺のベクトル値関数 $ f$ が 0 になるという条件、つまり連立方程式

$\displaystyle y=0, \quad -6x-y-3x^2 = 0
$

を解くと、 $ (x,y)=(0,0),(-2,0)$ となりますから、 $ 0\choose 0$, $ -2\choose 0$ という2点が平衡点です(それ以外に平衡点はありません)。「 $ -4\le x,y\le 4$ で描きなさい」としたのは、その二つの平衡点のまわりの様子が分かるような 範囲で描きなさい、という意味です。

さて、これを実行するには前回のプログラムをちょっと修正すれば OK です。 そうして作ったプログラムreidai8a.fを用意してあります。いつもの ようにgetsampleコマンドで手元にコピーした後に、コンパイルして実 行してみましょう。ここではサンプルの入力データを収めたファイルrei8a.data もありますので、それを使って試すことにすれば、

        getsample                    ← サンプルをコピー
        f77x reidai8a.f              ← コンパイル
        cat rei8a.data | reidai8a    ← サンプル・データで実行
で OK です。
\includegraphics[height=5cm]{ode_figure/ex95081.ps}
さて、これを見て何に気がつくでしょうか?全体としては、これまで見たこ とがない図ですが、平衡点の近くでは、「どこかで見た」形をしていますね?

$ 0\choose 0$ の回りでは安定渦状点、 $ -2\choose 0$ の回りでは不安定結 節点のような流れになっています。

大事なことは二つあって、一つは

平衡点は力学系の「ツボ」であって、
それを調べると多くの情報が分かる。
というものです。上の図で平衡点から離れたところはかなり単純な流れになっ ていることに注意して下さい。試しに描く範囲を大きくとって、自分でマウス を使って初期値を与えた図を描いてみるのもいいですね。次の例では $ -100
\le x, y \le 100$ の範囲で描くように指定しています(基本的な使い方はこ れまでと同じなので、もう説明は不要ですね?)。
        waltz11% reidai8a
         範囲(xleft,ybottom,xright,ytop)?
        -100 -100 100 100
         したいことを番号で選んで下さい。
          -1:メニュー終了, 0:初期値のキーボード入力, 1:初期値のマウス入力,
           2:change h,T(h= 0.0100,T=10.0000)
        1
         マウスの左ボタンで初期値を指定して下さい(右ボタンで中止)。

もう一つの大事なことは、平衡点の周囲の流れがどうなるかは、微分法を使っ てある程度まで解析できるということです。上の例題の右辺の $ f$ を微分し てヤコビ行列を作ると、

$\displaystyle \left(
\begin{array}{cc}
0 & 1 \\
-6-6x & -1
\end{array}\right)
$

となりますが、平衡点 $ 0\choose 0$, $ -2\choose 0$ での値はそれぞれ

$\displaystyle A_1=
\left(
\begin{array}{cc}
0 & 1 \\
-6 & -1
\end{array}\right),
\quad
A_2=
\left(
\begin{array}{cc}
0 & 1 \\
6 & -1
\end{array}\right)
$

となります。 $ 0\choose 0$ の回りでの流れは $ \dsp\frac{dx}{dt} = A_1x$ の原点での流れに、 $ -2\choose 0$ の回りでの流れは $ \dsp \frac{dx}{dt} =
A_2x$ の原点での流れに似ている、ということです。


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Masashi Katsurada
平成18年4月28日