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5.2.1 予備的解説

理系の人間にとって、 地球表面近くのような一様な重力場のもとで、空気抵抗を無視した場合の、 「投げられた」物体の軌跡については、高等学校の物理でおなじみであろう。 空気を無視しない、つまり抗力・揚力を考慮した場合にどうなるか、 という話である。 と言っても流体力学に本格的に首を突っ込むわけではなくて、 簡単な「公式」を認めて、後は普通の質点の力学の問題とするだけである。

運動する物体が空気から受ける力のうち、 速度方向の成分を抗力 (drag)、 速度と垂直の方向の成分を揚力 (lift) と呼ぶ。 抗力 $ \Vector{F}_{\mathrm{D}}$

$\displaystyle \Vector{F}_{\mathrm{D}}
=-\frac{C_{\mathrm{D}}}{2}\rho V^2 S \Ve...
...}_V,
\quad \Vector{e}_V:=\frac{\Vector{V}}{{\left\vert\Vector{V}\right\vert}}
$

で与えられる。ここで $ \rho$ は空気の密度、 $ \Vector{V}$ は物体の速度、 $ V$ は物体の速さ ( $ =\vert\Vector{V}\vert$ )、 $ S$ は物体の面積 ( $ \Vector{e}_V$ 方向の断面積) であり、 $ C_{\mathrm{D}}$ 抗力係数と呼ばれる無次元量である。 $ \Vector{e}_V$ は速度方向の単位ベクトルである。

これは、初歩の流体力学で学ぶ Stokes の抵抗 1とは異なっている (Stokesの抵抗は、力の大きさが速さに比例しているが、 こちらは速さの自乗に比例している)。

一方、揚力は、2次元の場合は

$\displaystyle \Vector{F}_{\text{L}}=\frac{C_{\mathrm{L}}}{2}\rho V^2 S \Vector{...
... \Vector{n}_V=
\begin{pmatrix}
0 & -1 \\
1 & 0
\end{pmatrix} \Vector{e}_V
$

という式で与えられる。 ここで $ C_L$ は揚力係数と呼ばれる。

球のような対称性のある物体には、翼のような揚力は生じないが、 回転している場合に、Magnus 力と呼ばれる 揚力 $ \Vector{F}_{\text{L}}$ が発生する。 その場合の揚力係数は

$\displaystyle C_{\text{L}}=\frac{2\alpha r\omega}{\left\vert\Vector{V}\right\vert}.
$

ここで $ r$ は球の半径、$ \omega$ は角速度、$ \alpha$ は無次元の定数である。

ところで [11] のバグ取りを二つ。

  1. p.?? で抗力を $ -c v^2$ としているが、 $ -c\;\sign(v) v^2$ あるいは $ -c v\left\vert v\right\vert$ とすべきである。
  2. p.?? で

3次元の場合の Magnus 力は、

$\displaystyle \Vector{F}=\gamma\Vector{\omega}\times\Vector{V}
$

の形だそうである。ここで $ \Vector{\omega}$ は、 回転の角速度ベクトルである。 $ \gamma$ はある比例定数ということであるが、 これについては次項で説明する。


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桂田 祐史
2015-12-24