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3 差分方程式

計算手続きの基本的な考え方は熱方程式の場合と同様である。

「空間変数」$ x$ については、区間 $ [0,1]$$ N$ 等分する:

$\displaystyle h=1/N, \quad x_i=ih \quad \hbox{($i=0,1,2,\cdots,N$)}.
$

「時間変数」 $ t$ については、刻み幅 (間隔) を $ \tau$ とする。 $ t_n$

$\displaystyle t_n=n\tau \quad \hbox{($n=0,1,\cdots$)}
$

で定める。

方程式 (1) に現れる二つの微分、$ t$ に関する $ 2$ 階偏微分 $ \displaystyle
\frac{\partial u}{\partial t}(x,t)$$ x$ に関する $ 2$ 階偏微分 $ \displaystyle
\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(x,t)$ の双方を、ともに「$ 2$ 階中心差分商」 で近似すると次の近似方程式が得られる:

$\displaystyle \frac{u(x,t+\tau)-2u(x,t)+u(x,t-\tau)}{\tau^2}=
\frac{u(x+h,t)-2u(x,t)+u(x-h,t)}{h^2}.
$

そこで格子点上 $ (x_i,t_n)$ での $ u$ の近似値 $ U_{i}^n$ を決定する方程式 としては次のものが考えられる。

$\displaystyle \frac{U_{i}^{n+1}-2U_{i}^{n}+U_{i}^{n-1}}{\tau^2}
=\frac{U_{i+1}^...
...{i}^{n}+U_{i-1}^{n}}{h^2}
\quad \hbox{($i=1,2,\cdots,N-1$; $n=1,2,3,\cdots$)},
$

これを変形すると

(5) $\displaystyle U_{i}^{n+1}= 2(1-\lambda^2)U_{i}^{n} +\lambda^2(U_{i-1}^{n}+U_{i+1}^{n}) -U_{i}^{n-1} \quad \hbox{($i=1,2,\cdots,N-1$; $n=1,2,3,\cdots$)}$

となる。ただし $ \lambda=\tau/h$ と置いた。

一方 (2) からは、ごく自然に

(6) $\displaystyle U_{i}^{0}=f(x_i) \quad \hbox{($i=0,1,2,\cdots,N$)}$

が得られる。(3) からは、例えば (他にも色々なやり方が考えられるが)

(7) $\displaystyle U_{i}^{1}= (1-\lambda^2)f(x_i) +\frac{\lambda^2}{2}(f(x_{i-1})+f(x_{i+1})) +\tau g(x_i) \quad\hbox{($1\le i\le N$)}$

が得られる4。 (4D) からは

(8D) $\displaystyle U_{0}^{n}=U_{N}^{n}=0 \quad \hbox{($n=0,1,2,\cdots$)},$

また (4N) からは

(8N) $\displaystyle U_{0}^{n}=U_{1}^{n}, \quad U_{N}^{n}=U_{N-1}^{n} \quad \hbox{($n=0,1,2,\cdots$)}$

が考えられる。

数列 $ \{U_{i}^{n}\}$ に関する方程式 (5),(6),(7),(8) は二つの添字 $ i$, $ n$ を含んでいるが、(5) を漸化式として、時刻に関する方の添字 $ n$ の小 さい方から順に計算していくことができる。熱方程式の場合は、二番目の添字 のところには、$ n$, $ n+1$ しか現れないが、(5) では $ n-1$, $ n$, $ n+1$ と 3 つのものが現れている。$ n+1$ での値を求めるために、一段前の $ n$ での 値のみならず、もう一段前の$ n-1$ での値が必要になったわけである。このこ とは、もとの方程式が時刻 $ t$ に関して $ 2$ 階であることに対応している。 そのため計算を出発させるためには、$ n=0$ での値だけでなく、$ n=1$ での値 も必要になるが、それは時刻に関する $ 1$ 階の微分を指定している初期条件 (3) に由来する (7) で与えられている。


熱方程式の場合と同様に、$ h$, $ \tau$ と性質の異なる刻み幅が 2 つある。 熱方程式の場合と同様に、安定に計算するためには両者を全く勝手なやり方で 0 に持っていくだけでは不十分である。とりあえず結論だけ述べておくと、 「安定であるためには $ \lambda$ $ 0<\lambda\le1$ と選んで固定したまま、 $ h$, $ \tau\to 0$とすれば良く、精度の面からは $ \lambda=1$ とするのがよ い」。


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Masashi Katsurada
平成19年7月21日