next up previous
Next: 3 差分方程式 Up: 現象数理特論B 1次元波動方程式の初期値境界値問題 Previous: 1 サンプル・プログラム

2 波動方程式 -- 簡単な説明

$ t$, $ x$ という 2 つの独立変数についての関数 $ u=u(x,t)$ についての方 程式

(1) $\displaystyle \frac{\partial^2u}{\partial t^2}(x,t) =c^2\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}(x,t) \qquad\hbox{($a< x< b$, $t> 0$)}$

$ 1$ 次元波動方程式 (wave equation) と呼ばれる2(ここで $ c$ は与えられた正の定数)。それは、この方程式が,一様な弦の振 動や,細い管の中の空気の振動などの、$ 1$ 次元的な振動・波動現象を表わすも のであると解釈出来るからである。弦の振動の場合は $ u(x,t)$ は時刻 $ t$ における、弦上の点 $ x$ の釣り合いの位置からの変位を表わすものと考える。

実は定数 $ c$ は波の伝播の速さになるが、以下では時刻の単位を適当に取 り替える (数学的には $ ct$ を新たに $ t$ とする変数変換を行う) ことによっ て $ c=1$ であるとして扱う3。同時に空間方向につい ても同様の変数変換を施すことによって $ a=0$, $ b=1$ と仮定することも出来 る。

この方程式は、時刻 $ t=0$ での各部分の変位と「速度」を指定することに 相当する初期条件

(2) $\displaystyle u(x,0)=f(x) \qquad \hbox{($0\le x\le 1$)}$

(3) $\displaystyle \frac{\partial u}{\partial t}(x,0)=g(x) \qquad \hbox{($0\le x\le 1$)}$

と、各時刻での弦の両端の状態を指定する境界条件を課すことにより、解 $ u$ が決定される問題となる。境界条件としては、両端が固定されていて (管の中 の空気の振動の場合では「端が閉じられていて」) 変位が常に 0 であると いう

(4D) $\displaystyle u(0,t)=u(1,t)=0 \qquad \hbox{($t> 0$)},$

あるいは、両端で自由に動ける(管の中の空気の振動の場合では「端が開放さ れている」)という

(4N) $\displaystyle \frac{\partial u}{\partial x}(0,t) =\frac{\partial u}{\partial x}(1,t)=0 \qquad \hbox{($t> 0$)}$

を考える。熱伝導方程式の場合と同様に (4D) を Dirichlet境界条件、(4N) を Neumann 境界条件と呼ぶ。


next up previous
Next: 3 差分方程式 Up: 現象数理特論B 1次元波動方程式の初期値境界値問題 Previous: 1 サンプル・プログラム
Masashi Katsurada
平成19年7月21日