11.1 定義

確率密度関数が

(3) $\displaystyle f(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}e^{-\frac{(x-m)^2}{2\sigma^2}}$   $\displaystyle \mbox{($m$ は実定数, $\sigma$ は正定数)}$

で与えられる分布を正規分布 (normal9distribution, Gauss10 分布) と呼び、 $ N(m,\sigma^2)$ で表す。後で述べるように、$ m$ は平均、 $ \sigma^2$ は分散になっているので、「平均 $ m$, 分散 $ \sigma^2$ の正規 分布」と呼ぶ。

確率密度関数と言うくらいだから、もちろん

$\displaystyle \int_{-\infty}^\infty f(x) \Dx=1$   $\displaystyle \mbox{(全確率は $1$)}$

であるが、その証明には公式

$\displaystyle \int_{-\infty}^\infty e^{-x^2} \Dx=\sqrt{\pi}$   (確率積分とも呼ばれる公式)

が必要になり簡単ではない ($ e^{-x^2}$ の原始関数は初等関数ではないこと に注意)。

(4) $\displaystyle \int_{-\infty}^\infty xf(x) \Dx=m,$

(5) $\displaystyle \int_{-\infty}^\infty (x-m)^2f(x) \Dx=\sigma^2$

であるから、$ m$ は平均 (期待値), $ \sigma$ は標準偏差 (言い替えると $ \sigma^2$ は分散) になっている。

特に平均 0, 分散 $ 1$ の正規分布 $ N(0,1)$標準正規分布 と呼ぶ。

確率変数 $ X$ $ N(m,\sigma^2)$ に従うとき、

$\displaystyle Z=\frac{X-m}{\sigma}
$

で定義される確率変数 $ Z$ は標準正規分布 $ N(0,1)$ に従う。ゆえに、特に

$\displaystyle P(a\leqq X\leqq b)
=P\left(\frac{a-m}{\sigma}\leqq Z\leqq \frac{b-m}{\sigma}\right)
$

であるから、一般の正規分布の確率の計算は標準正規分布の確率の計算に帰着 できる。

$ Z$ が正規分布に従うこと
$ X$ $ N(m,\sigma^2)$ に従うことから、任意の $ a$, $ b$ ($ a<b$) に対 して

$\displaystyle P(a\leqq X\leqq b)=\int_a^b \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}
e^{-\frac{(x-m)^2}{2\sigma^2}}\Dx
$

である。右辺の積分を簡単にするため、

$\displaystyle z=\frac{x-m}{\sigma}
$

と変数変換 (置換積分) すると、

$\displaystyle \D z=\frac{1}{\sigma}\D x$   より$\displaystyle \D x=\sigma\D z.
$

また

$\displaystyle a\leqq x\leqq b \quad \LongIff \quad
\frac{a-m}{\sigma}\leqq z\leqq \frac{b-m}{\sigma}
$

であるから

$\displaystyle P(a\leqq X\leqq b)
=\int_{(a-m)/\sigma}^{(b-m)/\sigma}
\frac{1}...
...nt_{(a-m)/\sigma}^{(b-m)/\sigma}
\frac{1}{\sqrt{2\pi}} e^{-\frac{z^2}{2}}\Dz.
$

右辺の被積分関数は標準正規分布の確率密度関数である。これは

$\displaystyle Z=\frac{X-m}{\sigma}
$

で定義される確率変数 $ Z$ が標準正規分布に従うことを意味している。$ \qedsymbol$



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桂田 祐史