5.4 Jordan領域の等角写像を求めるアルゴリズム

典型的な単連結領域に Jordan 領域がある。

Jordan曲線定理
$ \mathbb{C}$ 内の Jordan 閉曲線 $ C$ に対して、 $ C$ の “囲む” 領域 $ \Omega $ が定まり、$ \Omega $ は有界かつ単連結で、 その境界は $ C$ の像に等しい。

この定理で存在が保証される領域を、$ C$ の定める Jordan 領域と呼ぶ。 Jordan領域 $ \Omega $ は単連結領域であるから、 Riemannの写像定理によって、$ \Omega $ の等角写像 $ \varphi$ が存在するが、 以下に示すように、 $ \varphi$ は、あるポテンシャル問題を解くことによって求めることが出来る。


このとき、 $ \varphi\colon\Omega\to D_1$ が双正則写像で、 (5.1) を満たすとしよう。 $ \Omega $ の閉包から閉円盤への同相写像 $ \widetilde{\varphi}\colon\overline{\Omega}\to\overline{D_1}$ に 拡張できる (Carathéodory の定理)。 以下 $ \widetilde{\varphi}$ のことも $ \varphi$ と書くことにする。

関数 $ \dfrac{\varphi(z)}{z-z_0}$$ \Omega $ で正則であり、 かつ 0 という値を取らない。 $ \Omega $ が単連結であるから、 $ \log\dfrac{\varphi(z)}{z-z_0}$ の一価正則 な分枝が取れる。 その実部、虚部をそれぞれ $ u$, $ v$ とおく:

$\displaystyle u(z)+i v(z):=\log\dfrac{\varphi(z)}{z-z_0}.
$

両辺の実部を取ると、

$\displaystyle u(z)=\log\frac{\left\vert\varphi(z)\right\vert}{\left\vert z-z_0\right\vert}.
$

$ z\in\rd\Omega$ のとき、 $ \varphi(z)\in\rd D_1$, すなわち $ \left\vert\varphi(z)\right\vert=1$ であるから、

(5.1) $\displaystyle u(z)=-\log\left\vert z-z_0\right\vert$   ( $ z\in\rd\Omega$)$\displaystyle .
$

一方

(5.2) $\displaystyle \Laplacian u(z)=0$   ( $ z\in\Omega$)$\displaystyle .
$

(5.3), (B.13) は、 Laplace 方程式の Dirichlet 境界値問題である。 これを解いて $ u$を求め、$ v$$ u$ の共役調和関数で、 $ v(z_0)=0$ を満たすものとすると、$ \varphi$ は次のように求まる。

$\displaystyle \varphi(z)=(z-z_0)\exp\left[u(z)+i v(z)\right].
$

図 4:
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図 5:
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図 6:
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図 7:
Image fig4
桂田 祐史