5.3 誤差の特性関数の例 (1) 有限区間の場合の古典的公式

$ [a,b]=[-1,1]$, $ p(x)=1$ の場合の $ 21$ 点複合シンプソン公式 $ S_{20}$

$\displaystyle a=-1,\quad b=1,\quad m=10,\quad n=2m+1,\quad h=\frac{b-a}{2m},
$

$\displaystyle S_{2m}
=\frac{h}{3}
\left(
f(a)+2\sum_{j=1}^{m-1}f(a+2jh)
+4\sum_{j=1}^{m}f(a+(2j-1)h)
+f(b)
\right).
$

これは

$\displaystyle x_k=a+kh$   ( $ k=0,1,\dots,2m$)$\displaystyle ,
$

$\displaystyle w_k=
\left\{
\begin{array}[tb]{ll}
h/3 & \text{($k=0,2m$)} \ ...
...ots,m-1$)} \\
4h/3 & \text{($k=2j-1$, $j=1,2,\dots,m$)}
\end{array} \right.
$

とおくと、

$\displaystyle \Psi_{2m+1}(z)=\sum_{k=0}^{2m}\frac{w_k}{z-x_k}
$

と書ける。

$\displaystyle \Psi(z)=\Log\frac{z+1}{z-1},\quad
\Phi_{2m+1}(z)=\Psi(z)-\Psi_{2m+1}(z)
$

として、 $ \left\vert\Phi_{2m+1}(z)\right\vert$ ( $ -4\le\MyRe z\le 4$, $ -4\le\MyIm z\le 4$) の等高線を描いてみる。

(これは森 [12] にある図と見比べるためである。)

図 5: $ 21$点複合シンプソン公式の誤差の特性関数 (絶対値の常用対数)
Image simpson21
        
図 6: 森 [13] から $ \left \vert\Phi _n(z)\right \vert$ for Simpson's formula ($ h=0.1$)
Image simpson-by-mori

プログラムは、 付録 [*] を見よ。

$ z$ 平面において、積分区間 $ [a,b]$ から遠ざかると、 $ \left\vert\Phi_{2m+1}(z)\right\vert$ が急速に減少することが分かる。 このような挙動が多くの数値積分公式に共通して見られることは、 [*] で述べたことから理解できる。


この図は実際的な誤差評価に使うことが出来る。


\begin{jexample}% latex2html id marker 691
[森 \cite{Mori2005} から引用]
\b...
...が使える場合がある
(森 \cite{森4} を見よ)。 \qed
\end{jexample}


もう1つ、有限区間上の数値積分公式の誤差の特性関数の例をあげておく。 この講義では解説していないが、 有名な Gauss-Legendre 公式の場合を紹介する。

図 7: $ (-1,1)$ における $ 8$次 Gauss-Legendre 公式の誤差の特性関数 (絶対値の常用対数)
Image gausslegendre8

$ 8$ 次の Gauss-Legendre 公式は、 $ n=8$ 次の直交多項式の$ 8$ 個の零点を標本点に使い、 $ 2n-1=15$ 次までの多項式について正確な積分を計算できる。 つまり15位の公式である。 実際 $ \left\vert\Psi_{8}(z)\right\vert=10^{-16}$ の曲線が見え、 $ 21$ 点 Simpson 公式よりも格段に誤差の特性関数の値が小さい ($ 8$桁下、つまり1億分の1) ことが分かる。


桂田 祐史