B..1 定義

Napier の時代にはまだ文字式による計算が行われておらず、 彼は物理的な模型を使った説明を行っているが、 その内容を現代の用語に翻訳すると次のようになる。 $ r=10^7$ とおき、$ x$$ y$ の間に

$\displaystyle x=r\left(1-\frac{1}{r}\right)^y
$

の関係があるとき、$ y$$ x$ の対数とよんだ。 この文書ではこれを Napier の対数とよび、 $ \mathrm{Nap.Log} x$ を書くことにする。

この式は

$\displaystyle \frac{x}{r}=\left[\left(1-\frac{1}{r}\right)^r\right]^{y/r}
$

と書き直される。

$\displaystyle b:=\left(1-\frac{1}{r}\right)^r
$

とおくと、

$\displaystyle \frac{y}{r}=\log_b\frac{x}{r}
$

であるが、

$\displaystyle b\kinji \frac{1}{e},
$

実際

$\displaystyle b^{-1}=2.718281964\cdots\kinji e+1.350\times10^{-7}.
$

以上の事実を「Napier の対数は実質上 $ 1/e$ を底とする対数である」と 言うことが多いようである (しかしこの文からは漏れてしまうところが大きいので、 この文を述べるのには注意が必要であると思われる)。

桂田 祐史
2019-03-01