2.2 厳密解

結果の式が簡単になるように、 適当な初期条件を課した初期値問題の解を求めよう。

$ \theta_0$ $ 0<\theta_0<\pi$ なる定数として、

(5) $\displaystyle k:=\sin\frac{\theta_0}{2}$

とおき、初期条件を

(6) $\displaystyle \theta(0)=0,\quad \theta'(0)=2k\omega$

とする。前項の議論から振幅が $ \theta_0$ であることが分かる。

この初期値問題の解は

$\displaystyle \theta(t)
=2\sin^{-1}\left(k\;\mathrm{sn}\left(\omega t,k\right)\right)
$

であることを示そう。

まずエネルギー保存則 (4) から

$\displaystyle \frac{\D\theta}{\D t}=\sqrt{2}\omega\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}.
$

($ \pm$ をつけるべきかもしれないが、 $ \theta'(0)>0$ であるから、 $ t$ が小さいうちはこの微分方程式に従うはずである。)

これは変数分離形の微分方程式である。天下りであるが、

(7) $\displaystyle k z=\sin\frac{\theta}{2}$

と変数変換する。

    $\displaystyle \cos\theta-\cos\theta_0$ $\displaystyle =\left(1-2\sin^2\frac{\theta}{2}\right) -\left(1-2\sin^2\frac{\th...
...=2\left( \sin^2\frac{\theta_0}{2}-\sin^2\frac{\theta}{2} \right) =2(k^2-k^2z^2)$
      $\displaystyle =2k^2(1-z^2).$

また

$\displaystyle k \D z=\frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2}\cdot\D\theta
$

より

$\displaystyle \D\theta=\frac{2k \D z}{\cos\frac{\theta}{2}}
=\frac{2k \D z}{\sqrt{1-k^2z^2}}.
$

(多分、(4) を、 $ z(t)$ に関する微分方程式に変換する、 とやればもっとすっきりした議論になるのでしょう。いつか書き直そう。)

これから

    $\displaystyle t$ $\displaystyle =\int_0^{t}\Dt =\int_0^{\theta}\frac{1}{\sqrt{2}\omega}\cdot \fra...
...\int_0^{z} \frac{1}{\sqrt{2}k\sqrt{1-s^2}}\cdot\frac{2k \D s}{\sqrt{1-k^2s^2}}$
      $\displaystyle =\frac{1}{\omega}\int_0^z\frac{\D s}{\sqrt{(1-s^2)(1-k^2s^2)} }.$

すなわち

$\displaystyle \omega t=\int_0^z\frac{\D s}{\sqrt{(1-s^2)(1-k^2s^2)}}.
$

これは、Jacobi の楕円関数 $ \mathrm{sn}$ を用いると ( $ \omega t=\mathrm{sn}^{-1}(z,k)$ であるから)

$\displaystyle \mathrm{sn}(\omega t,k)=z=\frac{1}{k}\sin\frac{\theta}{2}
$

と解ける。ゆえに

(8) $\displaystyle \theta(t)=2\sin^{-1}\left(k\;\mathrm{sn}(\omega t,k)\right).$

これが初期値問題 (2), (6) の厳密解である。

桂田 祐史
2017-08-11