3.6.2 Banach 空間の場合

Banach 空間の場合には、 (3.3), (3.4) のような直和の形での結果を望むのは難しそうな雰囲気で ある (詳しくないので「無理」と言い切れないが多分駄目でしょう)。 用いるのは「直交関係」である。

稠密な定義域を持つ線型作用素について成り立つ

$\displaystyle R(A)^\perp=N(A^\ast),\quad
\overline{R(A)}={}^\perp N(A^\ast)
$

と、 稠密な定義域を持つ線型作用素で、 値を回帰的な Banach 空間に取るものについて成り立つ

$\displaystyle {}^\perp R(A^\ast)=N(A),\quad
\overline{R(A^\ast)}=N(A)^\perp
$

を基礎とする。

例えば、 任意の $ f$ に対して $ A u=f$ が可解である ($ A$ が全射である) ためには、 閉値域作用素であって、 かつ $ A^\ast$ の核が 0 であれば良いことはすぐわかるが、 そのための必要十分条件として、

$\displaystyle \exists C\ge 0\quad
\forall x\in D(A^\ast)\quad
\Vert x\Vert\le C\Vert A^\ast x\Vert
$

というもの (アプリオリ評価不等式) がある (定理 3.3.4)。

桂田 祐史
2017-04-30