3.5 Hilbert 空間の閉線型作用素に基づく直和分解

前節で利用した Hilbert 空間の直和分解に関する 命題の後始末をしておく。


\begin{jlemma}[閉作用素の核は閉部分空間]
$X$, $Y$\ はノルム空...
...素ならば
$N(A)$\ は $X$\ の閉線型部分空間である。
\end{jlemma}

証明

$ \{x_n\}$ $ x_n\in N(A)$ , $ x_n\to x$ in $ X$ を満たすとすると、 $ A x_n=0$ より $ A x_n\to 0$ . 閉線型作用素の定義より $ x\in D(A)$ . $ A x=0$ . ゆえに $ x\in N(A)$ . これは $ N(A)$ が閉集合であることを示している。 $ \qedsymbol$


\begin{jlemma}[Hilbert 空間の部分集合の直交の基本的性質]
$X$\ ...
...部分空間ならば $(A^\perp)^\perp=\overline A$.
\end{enumerate}\end{jlemma}

証明

(1)
(線型部分空間であること) $ x,y\in A^\perp$ , $ \lambda,\mu\in K$ とするとき $ \forall z\in A$ について、

$\displaystyle (\lambda x+\mu y,z)=\lambda(x,z)+\mu(y,z)
=\lambda 0+\mu 0=0
$

であるから、 $ \lambda x+\mu y\in A^\perp$ .

(閉集合であること) $ \{x_n\}$ $ x_n\in A^\perp$ , $ x_n\to x$ を満たすとすると、 $ \forall z\in A$ について、

% latex2html id marker 5428 $\displaystyle 0=(x_n,z)\to (x,z)\quad\therefore (x,z)=0.
$

ゆえに $ x\in A^\perp$ .
(2)
$ x\in B^\perp$ とすると、 $ \forall b\in B$ に 対して $ (x,b)=0$ . 明らかに $ \forall a\in A$ に対して $ (x,a)=0$ . ゆえに $ x\in A^\perp$ .
(3)
$ A\subset \overline A$ より、 (2) を用いて $ A^\perp\supset(\overline A)^\perp$ . 逆向きの包含関係を証明するため、 $ x\in A^\perp$ とする。 $ \forall y\in\overline A$ に 対して、 $ \exists \{y_n\}$ s.t. $ y_n\in A$ ($ n\in\N$ ) かつ $ y_n\to y$ ( $ n\to\infty$ ). このとき

% latex2html id marker 5462 $\displaystyle 0=(x,y_n)\to (x,y)\quad\therefore (x,y)=0.
$

ゆえに $ x\in\left(\overline A\right)^\perp$ . ゆえに $ A^\perp\subset \left(\overline A\right)^\perp$ .
(4)
(えーと、どうやるんだっけ?) $ \qedsymbol$


\begin{jproposition}
$X$, $Y$\ は Hilbert 空間、
$A\colon X\supset D(A)\to ...
...ゆえに $Y=N(A)\oplus \overline{R(A^\ast)}$.
\end{enumerate}\end{jproposition}

証明

(この命題は藤田・黒田・伊藤 [7] の演習問題。 証明してみよう :-) $ \qedsymbol$

桂田 祐史
2017-04-30