2.8 正規直交基底の応用 (1) -- 線型部分空間への直交射影 (2)

正規直交基底を用いて正射影の存在を証明しよう。 つまり解きかけだった例題 2 を解決することになる。


\begin{jproposition}[正射影の存在, 射影定理 (projection theorem)]
$V$...
...}
y=\sum_{j=1}^m (x,v_j)v_j
\end{displaymath}と書ける。
\end{jproposition}
$ V$ の任意の正規直交基底 $ v_1$ , $ \cdots$ , $ v_m$ を一つ取る。 $ x\in\R^n$ $ V$ への正射影 $ y$ が存在したとすると、それは $ v_i$ の線型結合で書けるはずである:

(2.3) $\displaystyle \exists \lambda_1,\cdots,\lambda_m\in\R$   s.t.$\displaystyle \quad y=\sum_{j=1}^m \lambda_j v_j.$

一方、直交性の条件 $ (x-y)\perp V$ も、$ \{v_i\}$ を用いて

$\displaystyle (x-y,v_i)=0$   $\displaystyle \mbox{($i=1,2,\cdots,m$)}$

と表わせる。これは

$\displaystyle (x,v_i)=(y,v_i)$   $\displaystyle \mbox{($i=1,2,\cdots,m$)}$

ということだが、(2.3) から

$\displaystyle (y,v_i)=\left(\sum_{j=1}^m\lambda_j v_j,v_i\right)
=\sum_{j=1}^m \lambda_j(v_j,v_i)
=\sum_{j=1}^m \lambda_j\delta_{ji}
=\lambda_i
$

であるから

$\displaystyle \lambda_i=(x,v_i)$   $\displaystyle \mbox{($i=1,2,\cdots,m$)}$

と同値である。よって、

$\displaystyle y=\sum_{j=1}^m (x,v_j)v_j
$

が求める直交射影である。$ \qedsymbol$

$ x$ $ V$ への正射影を $ y$ とするとき、$ z=x-y$ とおくと、

$\displaystyle x=y+z, \quad y\in V,\quad z\in V^\perp
$

が成り立つ。このような分解は一意的である。すなわち

$\displaystyle x=y'+z',\quad y'\in V,\quad z'\in V^\perp
$

とすると

$\displaystyle y=y'$   and$\displaystyle \quad z=z'.
$

実際 $ y+z=y'+z'$ より

$\displaystyle y-y'=z'-z
$

でこれは $ V\cap V^\perp=\{0\}$ に属するので 0 だから。 この事実を

$\displaystyle \R^n=V\oplus V^\perp
$

と表わす (もう少していねいに!)。

桂田 祐史
2017-04-30