next up previous contents
Next: 6.5.0.4 素朴な疑問をぶつぶつと Up: 6.5 都合が「よくない」場合の Lanczos 法 Previous: 6.5.0.2 うまく を取ると となる場合であっても

6.5.0.3 一発でうまくやることはあきらめて

ここでは $ A$ の最小多項式の問題には触れないことにする。 最初に選んだ $ x\ne 0$ に対して $ {\cal K}_n(A,x)\ne \R^n$ と仮定する。 $ m:=\dim{\cal K}_n(A,x)$ とおくと、 $ {\cal K}_m(A,x)={\cal K}_n(A,x)$ である。 $ {\cal K}_m(A,x)$ のことを単に $ {\cal K}_m$ と書くことにする。

明らかに $ {\cal K}_m$ $ A$ 不変、すなわち

$\displaystyle A{\cal K}_m\subset {\cal K}_m
$

をみたすが、 $ {\cal K}_m$ の直交補空間

$\displaystyle {{\cal K}_m}^\perp:=\{y\in\R^n; \forall z\in{\cal K}_m z^T y=0\}
$

$ A$ 不変である。実際 $ y\in{\cal K}_m^\perp$ とするとき、 任意の $ z\in {\cal K}_m$ に対して、

$\displaystyle (A y,z)=(y,A z)=0$   $\displaystyle \mbox{(${\cal K}_m$ の $A$ 不変性より $A z\in{\cal K}_m$ なので)}$

がなりたつので $ A y\in{\cal K}_m^\perp$ となり、 $ {\cal K}_m^\perp$ $ A$ 不変であることが分かる。

老婆心: $ y\in{\cal K}_n(A,x)^\perp$ とするとき、 任意の $ j\in\N$ に対して $ A^j y\in {\cal K}_n(A,x)^\perp$ であるから、 $ {\cal K}_n(A,y)\subset{\cal K}_n(A,x)^\perp$ .

そこで最初に選んだ $ x_1\ne 0$ に対して、 $ m:=\dim{\cal K}_n(A,x_1)<n$ であった場合は、 まず $ {\cal K}_n(A,x_1)$ の正規直交基底を取り、 その後で $ x_2\in{\cal K}_n(A,x_1)^\perp$ , $ x_2\ne 0$ から始めて、 $ {\cal K}_n(A,x_2)\subset {\cal K}_n(A,x_1)^\perp$ の正規直交基底を取り、 以下この操作を続けていけば、最後には

$\displaystyle \R^n={\cal K}_n(A,x_1)\oplus{\cal K}_n(A,x_2)\oplus\cdots\oplus
{\cal K}_n(A,x_r)
$

とできる。 それと並行して、 $ {\cal K}_n(A,x_j)$ の正規直交基底 $ \Vector{u}^j_{k}$ ( $ k=1,2,\dots,m_j$ ) が得られる。 この正規直交基底を

$\displaystyle \Vector{u}^1_1,\Vector{u}^1_2,\cdots,\Vector{u}^1_{m_1},
\Vector...
...{u}^2_{m_2},
\cdots,
\Vector{u}^r_1,\Vector{u}^r_2,\cdots,\Vector{u}^r_{m_r}
$

と並べたものを $ \{\Vector{u}_j\}_{j=1}^n$ として、 $ U:=(\Vector{u}_1 \Vector{u}_2 \cdots \Vector{u}_n)$ とおくと、

$\displaystyle U^T A U
=B
=\left(
\begin{array}{cccc}
B_1 & \\
& B_2 \\
...
...\ddots & \ddots \\
& & \beta^j_{m_j-1}& \alpha^j_{m_j}
\end{array} \right).
$

こうして得られた $ B$ は確かに三重対角行列である。


\begin{yodan}
三重対角行列
\begin{displaymath}
T=
\left(
\begin{array}...
...うかチェックしなければならないわけである。 \qed
\end{yodan}


next up previous contents
Next: 6.5.0.4 素朴な疑問をぶつぶつと Up: 6.5 都合が「よくない」場合の Lanczos 法 Previous: 6.5.0.2 うまく を取ると となる場合であっても
桂田 祐史
2015-12-22