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A..1.3 ご対面の後に (すぐ分かること)

まず $ J_{\nu}(z)$ の定義式からすぐに分かることを調べてみよう。 ここに書いてあることを理解するには複素関数論の (ごくごく初歩的な) 知識があればよい5

(1) の $ \sum$ の部分は いわゆる $ z$ のベキ級数であり、その収束半径は (後で示すように) $ \infty$ であるから、複素平面 $ \C$ 全体で正則な関数 (整関数と呼ぶのであった) を与える。 例えば導関数を求めたい場合は、単に項別微分すればよい。

ところが、 一見簡単そうに見える $ (z/2)^\nu$ の部分が要注意である。 $ \nu$ が 0 以上の整数でないとき、この式は

$\displaystyle (z/2)^\nu=\exp\left(\nu\log(z/2)\right)
$

のように解釈すべきものであり、 これは一般には整関数にはならないことを覚えているであろうか? 複素関数論の授業では、 $ w=\sqrt{z}$ や、$ w=\log z$ という関数について学んだはずである。 $ \log$ としていわゆる主値を取ると、 $ \C$ から負軸を除いた領域6

$\displaystyle \Omega:=\C\setminus\{x\in\R; x\le 0\}
$

で一価正則な関数を得ることができる。 特に $ \nu\in\R$ のとき、 任意の $ x>0$ に対して $ J_\nu(x)\in\R$ となる。 また $ \nu\ge 0$ ならば $ J_{\nu}(0)$ にも普通に意味がつけられる:

$\displaystyle J_\nu(0)=0$   $\displaystyle \mbox{($\nu>0$)}$$\displaystyle ,\quad
J_0(0)=1.
$

この Bessel 関数をどのように導入し、 その性質を調べて行くかについては、 実は色々な流儀があるが、 この文書では、 (桂田研学生にとっての) 後の応用を考慮して、 微分方程式を基礎として話を進めることにする。

身もふたもないまとめ
任意の $ \nu\in\C$ に対して、 $ J_\nu(z)$ は (負軸を除いた領域) $ \C\setminus\{x; x\le 0\}$ で正則である。 特に $ \nu$ が 0 以上の整数であるときは、 $ J_\nu(z)$$ \C$ 全体で正則である。


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Masashi Katsurada
平成18年11月21日