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C..3 Gaussの消去法作戦

$ A$ の対角線から下を掃き出す。 $ A$ が正値であれば、対角線に非零要素は現れず、 行交換なしに最後まで上三角化が進められて、対角線に正数が並ぶはずである。 一方、$ A$ が負値であれば、対角線に非零要素は現れず、 行交換なしに最後まで上三角化が進められて、対角線に負数が並ぶはずである。 そのいずれでもない場合、 必要ならば行交換を施して計算を進めて $ A$ の行列式を計算する (行交換を全部で $ r$ 回した場合、 最終的には対角成分の積 $ \times(-1)^r=\det A$ である)。 $ \det A\ne 0$ ならば、$ A$ は 0 を固有値に持たず、 正値でも負値でもないので、$ A$ は実は不定符号であることが分かる。 $ \det A=0$ の場合は少々難しいが、シフトしてみるなどして (つまり $ A$ の代りに、 $ A+\sigma I$ ($ \sigma$ は適当に選ぶ実数) を調べる)、 「何とかなる」場合が多いであろう。

$ A=\begin{pmatrix}1&2&3 2&2&0 3&0&3
\end{pmatrix}$ に対する Gauss の消去法は、行交換なしに

$\displaystyle \begin{pmatrix}1&2&3 2&2&0 3&0&3\end{pmatrix}\to
\begin{pmatr...
... 0&-6&-3\end{pmatrix}\to
\begin{pmatrix}1&2&3 0&-2&-6 0&0&15\end{pmatrix}$

となるので、いわゆる符号は $ (1,2)$ (負の固有値が$ 1$個, 正の固有値は $ 2$ 個) で、不定符号である。

$ p(\lambda):=\det(\lambda I-A)$ の根は

    $\displaystyle \lambda$ $\displaystyle = \frac{1}{3} \left(6+\frac{7 6^{2/3}}{\sqrt[3]{-9+i \sqrt{1977}}}+\sqrt[3]{6 i \left(\sqrt{1977}+9 i\right)}\right),$
      $\displaystyle \quad 2-\frac{\left(1+i \sqrt{3}\right) \sqrt[3]{-9+i \sqrt{1977}}}{6^{2/3}}+\frac{-7+7 i \sqrt{3}}{\sqrt[3]{6 i \left(\sqrt{1977}+9 i\right)}},$
      $\displaystyle \quad 2+\frac{i \left(\sqrt{3}+i\right) \sqrt[3]{-9+i \sqrt{1977}}}{6^{2/3}}+\frac{-7-7 i \sqrt{3}}{\sqrt[3]{6 i \left(\sqrt{1977}+9 i\right)}}.$

分かりづらいけれど、これは (もちろん) いずれも実数で

$\displaystyle \lambda\kinji 5.580664\cdots,2.2874\cdots,-1.877074\cdots.
$

$ p$ のグラフは次のようになる。
\includegraphics[width=10cm]{eps/graph1m6m2p24.eps}


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Masashi Katsurada
平成23年7月21日