next up previous
Next: 参考文献 Up: 多変数の微分積分学1 第14回 Previous: 高階の導関数 (いんとろ)

A. 全微分係数の一意性

(これは時間を埋めるため)

$ f$$ a$ で全微分可能とは、

$\displaystyle \exists A\in M(m,n;\R)$   s.t.$\displaystyle \quad
\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)-A h}{\left\Vert h\right\Vert}=0
$

が成り立つことである。さらに「この $ A$$ f$$ a$ における 全微分係数と呼び、 $ f'(a)$ と表す」と続くのだが、 $ A$ の一意性が証明されないとまずい (複数あるものを、 一つの記号で示すのはおかしい)。 それはちょっとしたクイズ・レベルの問題だが (答は自力で解こうとした人にしか教えない)、 少し後の「$ f$$ a$ で全微分可能ならば、 $ f$$ a$ で偏微分可能で、 $ f'(a)=\left(\dfrac{\rd f_i}{\rd x_j}(a)\right)$.」 という定理の内容を先取りしても良い。つまり、 次のようにする。
  1. $ f$$ a$ で全微分可能ということを定義する。
  2. $ f$$ a$ で全微分可能ならば、$ f$$ a$ ですべての変数 $ x_j$ に ついて偏微分可能で、全微分可能性の定義に出て来る行列 $ A$ ( $ \dsp\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)-A h}{\left\Vert h\right\Vert}=0$ を 満たす行列 $ A$) は、 ヤコビ行列 $ \left(\dfrac{\rd f_i}{\rd x_j}(a)\right)$ に等しい、 という定理を述べる (証明は同じ!)。
  3. $ f$$ a$ で全微分可能であるとき、 $ f'(a):=\left(\dfrac{\rd f_i}{\rd x_j}(a)\right)$ とおき、 $ f$$ a$ における全微分係数と呼ぶ、と定義し、 $ \dsp\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)-f'(a)h}{\left\Vert h\right\Vert}=0$ となることを注意しておく。
こうすると、 「全微分可能性」と「全微分係数」の定義が離れるのがタマにキズ。


next up previous
Next: 参考文献 Up: 多変数の微分積分学1 第14回 Previous: 高階の導関数 (いんとろ)
Masashi Katsurada
平成23年6月19日