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微分についてのイントロ

多変数になると変数の増分 $ h$ がベクトルになるので、 1変数の場合の微分係数の定義

$\displaystyle f'(a)=\lim_{h\to 0}\frac{f(a+h)-f(a)}{h}
$

は (ナンセンスな式になってしまうので) そのままの形では使えない。

多変数関数については、2つの微分がある。

(1)
全微分 $ f'(a)$
(2)
偏微分 $ \dfrac{\rd f}{\rd x_j}(a)$

1変数関数の微分 $ f'(a)$ と良く対応するのは、 全微分の方である (だから同じ記号を使うことにしたし、 最近は「全微分」と言わずに単に「微分」と呼ぶ人も増えている 1)。 例えば、 1変数実数値関数 $ f$ のグラフ $ y=f(x)$ 上の点 $ (a,f(a))$ に おける接線の方程式は $ y=f'(a)(x-a)+f(a)$ であるが、 多変数実数値関数 $ f$ のグラフ $ z=f(\vec x)$ 上の点 $ (\vec a,f(\vec a))$ に おける接平面の方程式は $ z=f'(\vec a)(\vec x-\vec a)
+f(\vec a)$ である。形式上はまったく違いがなく、 覚える苦労がない。

なお、$ f$ がベクトル値 $ f=\begin{pmatrix}f_1 \\ f_2 \\ \vdots \\ f_m
\end{pmatrix}$ である場合、

$\displaystyle \frac{\rd f}{\rd x_j}(a)
=\begin{pmatrix}
\dfrac{\rd f_1}{\rd x_j...
...ac{\rd f_2}{\rd x_j}(a) \\
\vdots\\
\dfrac{\rd f_m}{\rd x_j}(a)
\end{pmatrix}$

となるのは、これまでと同様である。


全微分と偏微分の関係はある意味簡単で、

$\displaystyle f'(a)
=
\begin{pmatrix}
\dfrac{\rd f_1}{\rd x_1}(a) & \dfrac{\rd ...
...c{\rd f_m}{\rd x_n}(a)
\end{pmatrix}=\left(\dfrac{\rd f_i}{\rd x_j}(a)\right).
$


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Masashi Katsurada
平成23年6月2日