2.9.1 基本的なアイディア

高橋秀俊, 森正武の研究として名高い2重指数関数型 積分公式 (double exponential formula) を解説する。


\begin{displaymath}
I=\int_a^b f(x) \Dx
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
a=\lim_{t\to-\infty}\varphi(t),\quad
b=\lim_{t\to\infty}\varphi(t)
\end{displaymath}

を満足する滑らかな単調増加関数 $\varphi\colon \R\to (a,b)$ を用いて 変数変換

\begin{displaymath}
x=\varphi(t)
\end{displaymath}

を施すと

\begin{displaymath}
I=\int_{-\infty}^\infty f(\varphi(t))\varphi'(t) \Dt.
\end{displaymath}

この積分に台形公式を適用すると

\begin{displaymath}
I_h=h\sum_{n=-\infty}^{\infty} f(\varphi(n h)) \varphi'(n h).
\end{displaymath}

$\varphi$ をどう選択するのが良いだろうか?話を簡単にするために $h$ は 固定しておくことにする。$I_h$ は無限和なので、実際の計算では

\begin{displaymath}
I_{h,N}=h\sum_{n=-N}^{N} f(\varphi(n h)) \varphi'(n h).
\end{displaymath}

で代用することを考えると、

\begin{displaymath}
\eps_{\rm t}\DefEq I_h-I_{h,N}
\end{displaymath}

という誤差 (「項の打ち切り誤差」) を小さくしたいが、 そのためには $\vert t\vert\to \infty$ とするとき、 $\varphi(t)$ は速く $0$ に減衰することが望まれる。ところがあまり急激に $\varphi(t)$ が減衰すると、刻み幅 $h$ が相対的に大きくなり、逆に精度が 落ちると考えられる。離散化誤差

\begin{displaymath}
\Delta I_h\DefEq I-I_h
\end{displaymath}

$\eps_{\rm t}$ がほぼ等しくなるところで無限和を切ると仮定して解析を 行うと、
(2.1) \begin{displaymath}
\varphi'(t)\kinji \exp(-C \exp\vert t\vert)\quad\mbox{($\vert t\vert\to\infty$)}
\end{displaymath}

の形であるときにある意味で最適な公式が得られる (高橋秀俊&森正武) 2.3

念のため: (2.2) はもちろん

\begin{displaymath}
\lim_{t\to\infty}\varphi'(t)=0\quad\mbox{(収束が非常に速い)}
\end{displaymath}

を意味するが、それから $\varphi(t)$$t
\to-\infty$, $\infty$ のとき $\varphi(a)$, $\varphi(b)$ に 急速に近づくことにもなる。

桂田 祐史
2016-03-13