この講義では、確率を数学的に扱うために集合の言葉で記述する。
サイコロを一回ふって出る目を調べるという試行では、 ( の目が出ることを単に と表わすようにすると5) 結果は , , , , , の 通りある。このとき、 , , , , を標本点 (sample point) と呼び、 標本点全体の集合 を 標本空間 (sample space) と呼ぶ。
ある試行の標本空間が有限集合であるか、無限集合であるかに従って、その 試行を有限試行 または無限試行と呼ぶ。
この講義では、第 9 節までは有限試行だけを考える。
をある試行 の標本空間とするとき、 の部分集合 に対して、 の結果として に属する標本点が出現することを簡単に「 がおこ る」という。そこで、 の部分集合 をじしょう 事象 (event) と呼ぶ。
ただ一つの標本点だけからなる事象を根元事象 (elementary event) と呼ぶ。
例えば、上のサイコロをふる例で、根元事象は
標本空間全体そのものの表わす事象を、 全事象 (total event) と 呼ぶ。
空集合の表わす事象を空事象 (empty event) と呼び、 または で表わす。
集合算の復習 |
集合について集合算がある。復習しておこう。ある集合 の部分集合 , について、 |
一つの有限集合の部分集合全体の集合は、集合算 , , に関して、Boole 代数をなす。特に以下の二つの法則が成り立 つことに注意しよう。
ここに現われた集合は、標本空間の部分集合なので、やはり事象である。そ れに名前をつけておく。
, を事象とする。
事象 と が互いに排反する . ( と が同時には起こらない、ということ。事象 は事象 の排反事象 (exclusive events) であるという。)