を最小にするものは、 を満たす。 この事実を Dirichlet の原理と呼ぶ。 実際、 を (on ) を満たす任意の関数とするとき、
は で最小となる (なぜならば、 も同じ境界条件を満たすので、 最小性の仮定から . これを で言い換えると、 . これは が で最小になることを意味する。)。 ところで
であるから、 は2次関数であり、 で最小となるためには
が必要十分である。Green の積分公式2 を適用して
これが任意の について成り立つことから、 .
以上の議論から、 を最小にするような を見出せば問題が解決することが分かる。 は常に を満たすので、 が下に有界でありることは明らかで、 従って の下限が存在する。 Riemann は、 (この下限は最小値であるから) 最小値を与える が存在する、と議論したのだが、 Weierstrass は「下限は最小値である」ことに疑義を示した (「数学解析」を学んだ人は、 いかにも Weierstrass がツッコミそうなところと思うかも)。
残念ながら若くして亡くなった Riemann は、 Weierstrass の批判に答えることが出来なかった。 この論法による完全な証明は、 約 50 年後 (1900年頃) に D. Hilbert が解決するまで持ち越された。
本当は、Dirichlet の原理は、 C. F. Gauss (1777-1855) がルーツで、 物理学の世界ではすでに知られていた考え方で、 それを Riemann が純粋数学に応用したのだ、という見方をする人もいる。
桂田 祐史