5.1.2.2 ちょっと詳しく解説

なんでヤコビ行列なんかが出て来るのか、不思議に感じる人がいるかも知れ ません。高校数学を思い出すと、「微分する=接線の傾きを求める(接線を引 く)」、という幾何学的理解が有効でした。接線の傾きを知るだけで結構色々 なこと (関数がそこの近くで $ x$ の増加にともない増加しているのか、減少 しているのか、極値となっているか等)が分かるということでした。曲線 $ y=f(x)$ の点 $ x=a$ における接線 $ y=f'(a) (x-a)+f(a)$ とは、$ a$ の近く で、$ f$ を1次式で近似したもの、ということです(というか、そういうふうに 解釈するのが、微分法の現代的な見方です)。大学の数学では、話が多次元に なってしまって、微分することの意味が少し見え難くなりましたが、「微分す るとは1次式で近似することだ」という認識は有効です。多次元の場合の1次式 とは $ Ax+b$ ($ A$ は行列、$ x$,$ b$ はベクトルで、$ Ax$ は行列とベクトルの かけ算を表す)の形の式のことです。つまり $ f(x)$ を点 $ a$ で微分して、微 分係数(ヤコビ行列)が $ A$ になったということは、 $ f(x)\simeq A(x-a) +
f(a)$ と考えられる、ということだったわけですね。$ a$ の近くでは、 $ A(x-a) + f(a)$ という1次式を調べるだけで、色々分かる、ということです。



桂田 祐史