A.5.2 ユークリッドの互除法による Strum 列の生成

多項式 $ f(x)\in\mathbb{R}[x]$ が与えられたとき、 $ f_0(x)=f(x)$ $ f_1(x)=f'(x)$ から Euclid の互除法を行い、関数列 $ f_0(x)$, $ f_1(x)$, $ \cdots$, $ f_\ell(x)$ を作る:

(A.5) $\displaystyle f_0(x):= f(x), \quad f_1(x):= f'(x),$


  $\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle q_1(x)f_1(x)-f_2(x), \quad \deg f_{2}(x)<\deg f_{1}(x),$
  $\displaystyle f_1(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle q_2(x)f_2(x)-f_3(x), \quad \deg f_{3}(x)<\deg f_{2}(x),$
  $\displaystyle f_2(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle q_3(x)f_3(x)-f_4(x), \quad \deg f_{4}(x)<\deg f_{3}(x),$
    $\displaystyle \vdots$  
(A.6) $\displaystyle f_{k-1}(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle q_{k-1}(x)f_{k}(x)-f_{k+1}(x),
\quad \deg f_{k+1}(x)<\deg f_{k}(x),$
    $\displaystyle \vdots$  
  $\displaystyle f_{\ell-2}(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle q_{\ell-1}(x)f_{\ell-1}(x)-f_\ell(x),
\quad \deg f_{\ell}(x)<\deg f_{\ell-1}(x),$
  $\displaystyle f_{\ell-1}(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle q_{\ell}(x)f_\ell(x).$

(普通の互除法と異なり、 $ f_{k-1}(x)$$ f_{k}(x)$ で割ったときの 普通の剰余 $ \times (-1)$ $ f_{k+1}(x)$ とする。)

よく知られているように $ f_\ell(x)$$ f(x)$$ f'(x)$ の最大公約多項 式であるから、 $ f(x)\in\mathbb{R}[x]$ が重根を持たない場合、 $ f_\ell(x)\equiv$   定数 ($ \ne 0$) となることに注意しよう。 以下この場合に $ f(x)=0$ の解 (根) を求めることを考える。 $ f(x)$ が重根を持つ場合は $ f(x)$ の代わりに $ g(x)=f(x)/f_\ell(x)$ を考えることで同様の議論ができる。


\begin{jtheorem}
% latex2html id marker 1172
$f(x)\in\mathbb{R}[x]$ が重根...
...2(x),\cdots, f_\ell(x)
\end{displaymath}は Strum 列をなす。
\end{jtheorem}

証明. まず $ f_\ell(x)\equiv$定数 であるから、Strum 列の条件 (3) は満 たされている。次にある $ x_0\in [a,b]$, ある $ k\in\{0,1,\cdots,\ell-1\}$ に対して

$\displaystyle f_{k}(x_0)=f_{k+1}(x_0)=0
$

となったとすると、式 (A.8) から $ f_{k+2}(x_0)$ 以降の $ f_j(x_0)$ もすべて 0 になり、特に $ f_\ell(x_0)=0$. これは $ f_\ell(x)$ が定数関数 ($ \ne 0$) であることに矛盾する。ゆえに Strum 列の条件 (1) が 満たされる。 次にある点 $ x_0$, ある $ k\in\{1,2,\cdots,\ell-1\}$ に 対して $ f_k(x_0)=0$ となったとすると、式 (A.8) から

$\displaystyle f_{k-1}(x_0)=-f_{k+1}(x_0).
$

ゆえに Strum 列の条件 (2) も満たされる (条件 (3) から上式の値は 0 にな らないことに注意)。 最後に $ x_0$$ f(x)$ の根であるとき、$ f(x)$ が重根を持たないという 仮定から $ f'(x_0)\ne 0$ で、

$\displaystyle f'(x_0)f_1(x_0)=f'(x_0)^2>0
$

となり、条件 (4) も満たされる。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$

桂田 祐史