4 「等時性」が成り立っているかを調べる

振幅が $ \theta_0$ である単振り子の周期は ($ s$ 0 から $ 1$ に変化するのに要する時間の$ 4$ 倍だから)

$\displaystyle T=4\times\frac{1}{\omega}\int_0^1\frac{\D s}{\sqrt{(1-s^2)(1-k^2s^2)} }
=4\sqrt{\frac{\ell}{g}}K(k),\quad k:=\sin\frac{\theta_0}{2}.
$

ただし $ K(k)$ $ k$ を母数とする第1種完全楕円積分である:

$\displaystyle K(k):=\int_0^{\pi/2}\frac{\D t}{\sqrt{1-k^2\sin^2 t}}.
$

これと単振動の周期

$\displaystyle T_h:=2\pi\sqrt{\frac{\ell}{g}}
$

との比

$\displaystyle \frac{T}{T_h}=\frac{2}{\pi}K(k)
$

を具体的に計算してみよう。

$\displaystyle \frac{T(\theta_0=1)}{T_h}=1.06633424557996\cdots,
$

$\displaystyle \frac{T(\theta_0=45^\circ)}{T_h}=1.039973343196804\cdots,
$

$\displaystyle \frac{T(\theta_0=90^\circ)}{T_h}=1.180340599016096\cdots.
$

つまり $ \theta_0=45^\circ$ でほぼ $ 4$ % しかずれていない。 さすがに $ \theta_0=90^\circ$ になると $ 18$ % ほどずれている。

$\displaystyle K(k)=\frac{\pi}{2}
\left[1+\left(\frac{1}{2}\right)^2k^2
+\left...
...k^4
+\left(\frac{1\cdot3\cdot5}{2\cdot 4\cdot6}\right)^2k^6
+\cdots
\right]
$

であるから

(10) $\displaystyle \frac{T}{T_h}=\frac{2}{\pi}K(k) = 1+\left(\frac{1}{2}\right)^2k^2...
...frac{1\cdot3\cdot5}{2\cdot 4\cdot6}\right)^2k^6 +\cdots \kinji 1+\frac{k^2}{4}.$

$ \theta_0=45^\circ$ のとき、 $ k=\sin\frac{\pi}{8}
=0.38268\cdots$ であるから、 $ 1+\dfrac{k^2}{4}=1.0366\cdots$ . あまり良い近似でないかな? (もう1項くらい取れば…)。

$ \theta_0$ (度) $ T/T_{h}$
0 1.000000000000000
10 1.001907188143217
20 1.007669025791545
30 1.017408797595956
40 1.031340519130037
50 1.049782960623032
60 1.073182007149365
70 1.102144909639270
80 1.137492559923922
90 1.180340599016096
100 1.232229196737520
110 1.295339998876550
120 1.372880500618350
130 1.469819325894477
140 1.594446101177228
150 1.762203729503756
160 2.007507401244124
170 2.439362719673885
179 3.901065160389150

5 は、 これをグラフにしたものである。 $ 90^\circ<\theta_0<180^\circ$ はあまり現実的な振り子の運動と言えないから、 $ 0^\circ<\theta_0<90^\circ$ の場合のみ注目すると、 振り子の等時性はほどほどの精度で成立する、と言えそうである。

(振り子の等時性が成り立たないことは実験してみれば分かる、 という人がいるけれど、 かなり真剣に取り組まないとはっきりしないのではないか? と思う。)

図 5: 振り子の等時性: 振幅で周期がどう変るか
\includegraphics[width=0.9\textwidth]{prog/toujisei.eps}

桂田 祐史
2017-08-11