紐の長さが である単振り子 (たんしんし単振子, simple pendulum) の運動方程式は、 を重りの質量、 を重力加速度として
となる。これから
微小振動 ( ) の場合は、 は に近いので、 単振り子の運動は
に従う単振動で良く近似できる、とされる (高校物理の相場)。 単振動は (大学の理系の学科では) 「常識的」で1、一般解は
であり、これは周期
を持つ周期関数である、と明解に解ける。 この周期が と だけで決まることから、 「振り子の等時性が成り立つ (周期は振幅によらない)」ということにもなる。
しかし、単振動で近似するのはあくまでも近似である。 どうして近似を用いた説明が多いのかというと、 近似しないで解くのが難しいからである (後で見るように、解や周期を表すのに、 楕円関数、楕円積分というものが必要になる2)。 この文書の目的は、 本来の振り子の運動 (微分方程式 (1) の解) がどうなるか (近似を用いずに)、きちんと考えてみよう、 ということである。
単振り子は、 単振動ではないとすると、 本当に周期運動をするか?と心配となるが、 次節でも証明するエネルギー保存則
より大丈夫であることが分かる (戻ってきた時、前と同じ速さであり、減衰したりはしない 3。
ガリレオが発見したという『振り子の等時性』は、 実は厳密には成立しない性質であるが (つまり周期は本当は振幅による)、 どの程度成り立っているものなのかも、 明らかにしよう (目で見て分かるようにする -- 後の図 5)。
桂田 祐史