1.2 零集合、完備な測度空間

測度空間 $(X,{\cal B}, \mu)$ の部分集合 $A$ が零集合であるとは、

\begin{displaymath}
A\in {\cal B},\quad \mu(A)=0
\end{displaymath}

を満たすことと定義する。

$\R^n$ の Lebesgue 測度の場合は、簡単な言い換えがある。


\begin{jtheorem}[Riemann 可積分の必要十分条件 (Lebesgue, 1902)]
$\R$\...
...が零集合 (Lebesgue 測度が $0$) であることである。
\end{jtheorem}

測度空間 $(X,{\cal B}, \mu)$ あるいは測度 $\mu$ が完備であるとは、 任意の零集合の部分集合が可測であることと定義する。

$\R^n$ の Lebesgue 測度は完備である。

$A$ が零集合であるとき、その部分集合 $B$ は可測であれば、 測度の単調性から、

\begin{displaymath}
0\le \mu(B)\le \mu(A)=0
\end{displaymath}

となるので、$\mu(B)=0$. ゆえに $B$ は零集合に他ならない。 したがって、完備であることの条件を 「任意の零集合の部分集合が零集合である」と言ってもよい。

桂田 祐史
2017-05-22