1.2 相加平均 $\ge $ 相乗平均


\begin{jproposition}[非負の数の相加平均は相乗平均より大きい...
... $x_1=x_2=\cdots =x_n$ のとき、そのときに限る。
\end{jproposition}
$f=-\log$ とおくと $f''>0$ であることに注意すれば、 前小節の命題より明らか。 $x_1=(y_1)^2$, $\cdots$, $x_n=(y_n)^2$ とおくことにより、

\begin{displaymath}
\frac{(y_1)^2+(y_2)^2+\cdots+(y_n)^2}{n}
\ge \sqrt[n]{(y_1 y_2\cdots y_n)^2}
\end{displaymath}

を証明すればよいが、同次性から単位球面上で

\begin{displaymath}
\frac{1}{n}\ge \sqrt[n]{(y_1 y_2\cdots y_n)^2}
\end{displaymath}

を示せば十分である。 そこで

\begin{displaymath}
f(y_1,y_2,\cdots,y_n)\DefEq
(y_1)^2 (y_2)^2\cdots (y_n)^2,
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
g(y_1,y_2,\cdots,y_n)\DefEq (y_1)^2+(y_2)^2+\cdots+(y_n)^2-1
\end{displaymath}

とおき、条件 $g(y)=0$ のもとでの $f$ の最大値を調べる。 まず方程式 $g(y)=0$ は単位球面を表わし、これはコンパクトであるから、 最大値が存在することが分かる。 また

\begin{displaymath}
\nabla f(y)=
2\left(
\begin{array}{c}
y_1 (y_2)^2 \cdots...
..._2)^2 \cdots y_n
\end{array} \right),
\quad
\nabla g(y)=2 y
\end{displaymath}

であるから、条件 $g(y)=0$ のもとでは $\nabla g(y)\ne 0$. ゆえに 最大値は必ず Lagrange の未定乗数法で求まる。つまり最大値点 $y$ では $\exists\lambda\in\R$ s.t.

\begin{displaymath}
\nabla f(y)=\lambda g(y).
\end{displaymath}

これを成分で書くと

\begin{eqnarray*}
(y_1)^1 (y_2)^2 (y_3)^2\cdots (y_{n-1})^2 (y_n)^2&=&\lambda y...
...(y_1)^2 (y_2)^1 (y_3)^2\cdots (y_{n-1})^2 (y_n)^1&=&\lambda y_n.
\end{eqnarray*}

明らかに最大値は正であるから、$y_j\ne 0$ ( $j=1,2,\cdots, n$). ゆえに

\begin{displaymath}
L\DefEq \prod_{j=1}^n (y_j)^2
\end{displaymath}

とおくと、

\begin{displaymath}
\frac{L}{(y_1)^2}=
\frac{L}{(y_2)^2}=\cdots=
\frac{L}{(y_n)^2}=\lambda
\end{displaymath}

これから $(y_1)^2=(y_2)^2=\cdots=(y_n)^2$. 和が $1$ である ($g(y)=0$) から、

\begin{displaymath}
(y_1)^2=(y_2)^2=\cdots=(y_n)^2=\frac{1}{n}.
\end{displaymath}

ゆえに条件 $g(y)=0$ の下での $f$ の最大値は

\begin{displaymath}
f(y)=\left(\frac{1}{n}\right)^n.
\end{displaymath}

これから $g(y)=0$ を満たす任意の $y$ に対して、

\begin{displaymath}
f(y)\le \left(\frac{1}{n}\right)^n.
\end{displaymath}

ゆえに

\begin{displaymath}
\sqrt[n]{f(y)}\le \frac{1}{n}. \qed
\end{displaymath}

桂田 祐史
2017-04-30