5.2 Liouvilleの定理, Abelの定理


\begin{jproposition}[Liouvilleの第1定理]
(全平面で)正則な楕円関数は定数関数に等しい。
\end{jproposition}

証明. 二重周期性から、値域は、基本領域 (あるいはその閉包) の像に等しく、 それはコンパクトであるから有界である。ゆえに、 「有界な整関数は定数関数に限る」と言うLiouvilleの定理から、 定数関数であることが導かれる。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$


\begin{jcorollary}
定数でない楕円関数は極を持つ。特に$\mathbb{C}$全体で正則ではない。
\end{jcorollary}


\begin{jproposition}[Liouvilleの第2定理]
楕円関数 $f$ の任意の1つ...
...a$ に属する $f$ の極の留数の和は$0$である。
\end{jproposition}

証明. $ f$ の極は孤立しているので、$ \Delta$ を平行移動した $ \Delta'$ の周上に極がないように出来る。

$ f$ の周期性から、$ \Delta$ に属する極における留数の和と、 $ \Delta'$ に属する極における留数の和は等しいので、 $ \Delta'$ について留数の和が 0 であることを示せば良い。 ゆえに最初から $ \Delta$ の周上に極がないとして示せば良い。

$ \Delta$ の周に沿って正の向きに一周する閉曲線 $ \rd\Delta$ に沿う線積分は、 周期性から0に等しい。 留数定理によって、その $ \Delta$ 内部の留数の和は0に等しい。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$


\begin{jdefinition}[楕円関数の位数]
楕円関数$f$の、
任意の1つ...
...るとき、$f$ は$m$位の楕円関数であるという。
\end{jdefinition}
(基本領域の選び方によらずに定まることに注意せよ。)


\begin{jcorollary}
$1$位の楕円関数は存在しない。
\end{jcorollary}

証明. $ 1$位の楕円関数$ f$が存在したとする。 $ f$ は、ただ1つの極を持ち、その位数は$ 1$であるが、 その留数は命題5.11 によって0である。 これは、それが $ f$ の極であることに矛盾する。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$


\begin{jproposition}[Liouvilleの第3定理]
楕円関数 $f$ の1つの基本...
...極の位数の和と、
零点の位数の和は等しい。
\end{jproposition}

証明. $ \Delta$ の周上に $ f$ の極、零点が存在しないとして示せば良い。

$ f$ を楕円関数とする。$ f$ の周期は $ f'$ の周期でもあり $ \dfrac{f'}{f}$ の周期でもある。 $ \Delta$ の周を正の向きに一周する閉曲線 $ \rd\Delta$ について、 偏角の原理から

$\displaystyle \int_{\rd\Delta}\frac{f'(z)}{f(z)}\Dz
=$零点の位数の和$\displaystyle -$極の位数の和$\displaystyle .
$

この線積分の値は命題5.11 で見たように0であるから、

   零点の位数の和$\displaystyle =$極の位数の和$\displaystyle . \qed
$

$ \qedsymbol$


\begin{jproposition}[Abelの定理 (Liouvilleの第4定理)]
位数が2以上...
...aymath} ただし $\Gamma$ は $f$ の周期群である。
\end{jproposition}

証明. (工事中) $ \qedsymbol$



桂田 祐史