next up previous contents
Next: 2.7.2 非対称の場合 Up: 2.7 Wielandt の減次 Previous: 2.7 Wielandt の減次

2.7.1 対称の場合

最初に簡単のため、$ A$ が対称 $ A^*=A$ の場合を考える。 冪乗法により、 $ \lambda_1$ と対応する固有ベクトル $ z_1$ を求めたとする。 $ \lambda_i$ に属する固有ベクトルを $ z_i$ として ( $ i=2,3,\cdots,n$ )、 $ z_1$ , $ \cdots$ , $ z_n$ が正規直交系 ( $ z_i^* z_j=\delta_{ij}$ ) であるとする (ただし $ i\ge 2$ について、具体的に求めるわけではない)。 このとき、

$\displaystyle B=A-\lambda_1 z_1 z_1^*
$

とおくと、これも対称で、

$\displaystyle B z_1=A z_1-\lambda_1 z_1 z_1^*z_1
=\lambda_1 z_1-\lambda_1 z_1\cdot1=0,
$

$\displaystyle B z_i=A z_i-\lambda_1 z_1 z_1^* z_i
=\lambda_i z_i-\lambda_1 z_1\cdot0=\lambda_i z_i$   $\displaystyle \mbox{($i=2,3,\cdots,n$)}$$\displaystyle .
$

ゆえに $ B$ について冪乗法を適用すると、$ \lambda_2$ が得られるはずである。

$ B$ と任意に与えられたベクトル $ v$ との積は

$\displaystyle B v=A v-\lambda_1 z_1 (z_1^* v)
$

と計算できるので、$ B$ の成分を求めておく必要はないことに注意しよう。


next up previous contents
Next: 2.7.2 非対称の場合 Up: 2.7 Wielandt の減次 Previous: 2.7 Wielandt の減次
桂田 祐史
2015-12-22