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2 概略

対称な問題 (行列が実対称行列や Hermite 行列である場合) と、 そうでない問題との間には大きな違いがある。

古典的な Jacobi 法は別にして、次の手順を採る。

  1. 与えられた行列を「簡単化」する。 具体的には、対称な問題の場合は三重対角化し、 非対称な問題の場合には Hessenberg 形にする。 直交行列による相似変換が基本である。
  2. 簡単化された問題を反復法で解く。 冪乗法の系統 (逆反復法, シフト法を含む)、二分法、QR 法など。

この中継地点の発見をしたのは、Givens であるという。 戸川 [11] (1971) から引用する。

それを最初に行ったのはギブンスであった。 彼は 1 のために、のちにギブンスの方法と呼ばれるようになった 有名な算法を考案し、 また 2 のために、現在ではスツルムの方法とか、 バイセクション法と呼ばれている算法を考案した。 それらは現在でも有力な手法として使われているが、 その後、上記 1, 2 それぞれに 対し、新しい方法が次つぎに発表され、 どちらもきわめて能率よく計算できるようになった。 現在、1 の方法としてはハウスホルダー 法が決定版といわれており、2 の方法としては、 小さい固有値を数個求めたいとか、 大きい固有値を数個求めたいという場合は スツルム法、 すべての固有値を求めたい場合は QR 法が 最もよいとされている。 問題によっては 1 の目的に (改良された) ランチョス法が用いられることがある。

ちなみに Wilkinson がかの ``Algebraic Eigenvalue Problem'' を 著したのは 1965 年である。


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桂田 祐史
2015-12-22