5.1 誤差の特性関数

(準備中 -- 「数値積分ノート」[1] の付録 G にある。)

$ -\infty\le a<b\le +\infty$, $ f$ $ \mathbb{C}$ における $ \overline{(a,b)}$ の開近傍 $ D$ で定義された 正則関数とするとき

$\displaystyle I=\int_a^b f(x)\;\Dx,
$

あるいは可積分な重み関数 $ p\colon(a,b)\to\mathbb{R}$ に対して

$\displaystyle I=\int_a^b f(x)p(x)\;\Dx
$

を求めることを考える。

多くの数値積分公式は、 $ x_1,\cdots,x_n\in\overline{(a,b)}$ $ w_1,\cdots,w_n$ を用いて

$\displaystyle I_n=\sum_{k=1}^n w_k f(x_k)$ (32)

と表される。誤差

$\displaystyle \Delta I_n:=I-I_n
$

の評価をしたい。

簡単のため、以下では $ a$, $ b$ が有限と仮定する。

$ \Gamma$$ D$ 内の区分的に$ C^1$級の閉曲線で、 $ [a,b]$ を正の向きに一周しているとする。

$ x\in(a,b)$ とするとき、Cauchy の積分公式から

$\displaystyle f(x)=\frac{1}{2\pi i}\int_\Gamma\frac{f(z)}{z-x}\;\D z$ (33)

が成り立つ。 ゆえに

$\displaystyle I=\int_a^b\left(\frac{1}{2\pi
i}\int_\Gamma\frac{f(z)}{z-x}\;\Dz\right)
p(x)\;\Dx.
$

積分順序の交換が容易に出来て、

$\displaystyle I=\frac{1}{2\pi i}
\int_\Gamma\left(\int_a^b\frac{p(x)}{z-x}\Dx\right)f(z)\;\Dz.
$

$ \varPsi$

$\displaystyle \varPsi(z):=\int_a^b\frac{p(x)}{z-x}\;\Dx$ (34)

で定めると、

$\displaystyle I=\frac{1}{2\pi i}\int_\Gamma \varPsi(z)f(z)\;\Dz$ (35)

が成り立つ。

$ \varPsi$$ p$Hilbert 変換と呼ばれ、 $ \mathbb{C}\setminus[a,b]$ で正則である (証明は容易)。 $ p(x)\equiv 1$の場合は

$\displaystyle \varPsi(z)=\Log\frac{z-a}{z-b}
$

である。ここで $ \Log$ は主値を表す。

一方、(34) を (33) に代入すると

$\displaystyle I_n=\sum_{k=1}^n w_k\frac{1}{2\pi i}\int_\Gamma\frac{f(z)}{z-x_k}\D z.
$

そこで

$\displaystyle \varPsi_n(z):=\sum_{k=1}^n\frac{w_k}{z-x_k}$ (36)

とおくと

$\displaystyle I_n=\frac{1}{2\pi i}\int_\Gamma\varPsi_n(z)f(z)\;\D z.$ (37)

ゆえに

$\displaystyle I-I_n=\frac{1}{2\pi i}\int_\Gamma\varPhi_n(z)f(z)\;\Dz.
$

ここで $ \varPhi_n$

$\displaystyle \varPhi_n(z):=\varPsi(z)-\varPsi_n(z)$   ( $ z\in\mathbb{C}\setminus[a,b]$) (38)

で定義される関数で、 (数値積分公式の)誤差の特性関数と呼ばれる。

大まかに言うと、 $ \left\vert\varPhi_n\right\vert$ が小さいならば、 数値積分の誤差の大きさ $ \left\vert I-I_n\right\vert$ が小さいと期待できる。 数値積分公式の良し悪しが $ \varPhi_n$ を調べることで判定できる。

実際、講義で説明したような数値積分公式に対して、 $ \varPsi_n(z)=\dsp\sum_{k=1}^n\frac{w_k}{z-x_k}$ は、 $ \varPsi$ の有理関数近似となっていることが示される (詳しいことは…)。

高橋・森は、誤差の特性関数を上のように定義して、 $ \mathbb{C}$ 内の $ [a,b]$ を含む領域で $ \left\vert\varPhi_n\right\vert$ を図示して、 研究した。

桂田 祐史