まだ「歴史」というほど古くはないかもしれないけれど、 自分が見て来たわけではないので (さすがに私もその頃は小学生) … 今の学生にとっては、十分に歴史かもしれない。
3 節のような例を知って、 面白いと感じても、でも特殊例に過ぎない、 と切り捨ててしまう人が多いと思われるが、 非凡な人は見逃さない。
1970年、伊理正夫、森口繁一、高澤嘉光により、 後年 IMT公式 と呼ばれる積分公式が提唱された ([9], [10])。 これは積分を変数変換によって、 滑らかな周期関数の1周期積分に変換して、 それに対して台形公式を適用する、という考えに基づく。 (有名な読み物である伊理・藤野 [18] の第7章もあげておく。 そこでは Murota-Iri [] があげられている。)
(一松 [12] によると、 「日本において最初に発見された他の多くの重要な業績と同様に, 日本において順調に発展したとはいい難く,外国で有名になり, 後年になって結果的に日本に逆輸入されるという経過をたどっているのは、 残念なことと思う.」)
IMT 公式は非常に高性能であるが、それをヒントにして、 さらに高性能なDE公式 (double exponential formula, 二重指数関数型数値積分公式) が高橋秀俊と森正武により提唱された ([4], [5] が報告され、 [6], [7] が出版された)。
DE公式は、ほぼ最適の公式であると考えられている (それを裏付ける数学的証拠がある)。
IMT公式も、DE公式も、Mathematica の NIntegrate[] で利用されている。
以下は完全な雑談である。
比較的近年であることから、発表当時の情報が得やすい。 京都大学数理解析研究所で行われた研究集会での発表は、 京都大学数理解析研究所講究録 の形で残っていて、フリーにアクセス出来る (正式な論文でないが、 日本語で書かれているのも、まだ英語に不慣れな学生には嬉しいかも? もしかすると書く方にとっても、細かいニュアンスが書きやすいかもしれない…)。
伊理・森口・高澤 [9] の発表があった研究集会 (「科学計算基本ライブラリーのアルゴリズムの研究会」, 1969/11/5〜1969/11/07, 於 京都大学数理解析研究所)で、 直後の発表が高橋・森[13] であった (後に [14] が出版される)。 これは数値積分を複素関数論の手法で誤差解析する手法に関するものであった。