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2 行列の等比数列

一つの正方行列 $A$ の冪 $A^n$ で作られる行列の列、いわば行列の等比数列

\begin{displaymath}
A^0=I, A^1=A, A^2, \cdots, A^n, A^{n+1},\cdots
\end{displaymath}

の極限はどうなるだろうか? 既に学んだかもしれないが (行列の Jordan 標準形の簡単な応用である)、 ここでは実験で試してみよう。

isc-xas05% octave  
octave:1> n=5  
octave:2> a=rand(n,n)  
octave:3> a*a  
octave:4> a^2  
octave:5> a^100  
octave:6> a^1000  

Octave では、行列 an 乗は a^n で計算できることがわかるが、 この例では n の増加と共に急速に大きくなり、 あっと言う間にオーバーフローすることが分かる。

種明かしをすると、 行列の固有値の絶対値 (これをスペクトル半径と呼ぶ) を調べると 事情が見えてくる。

octave:7> eig(a)  
octave:8> r=max(abs(eig(a)))  
octave:9> a=a/r  
octave:10> max(abs(eig(a)))  
octave:11> a^100  
octave:12> a^1000  

Octave では max(abs(eig(a)))a の スペクトル半径が計算できる。 a をそのスペクトル半径 r で割ることで、 スペクトル半径を $1$ に縮めることができる。 a^100, a^1000 ともにオーバーフローしていないが、 それだけでなく何かが起こっていることに気がつくだろうか? (どうしてそうなるのか考えてみよう。)

今度はスペクトル半径が $1$ より小さい行列の冪を調べてみよう。

octave:13> a=0.9*a  
octave:14> a^100  
octave:15> a^1000  
octave:16> a^10000  


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Masashi Katsurada
平成15年7月3日