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A..7 固有値問題の解法を理解するための緒命題

与えられた行列をまず直交行列による相似変換で「簡単な形」に変形していく。 もしも上三角行列に出来ればめでたしめでたしであるが…


\begin{jproposition}\upshape
\begin{enumerate}[(1)]
\item
$A$ を正則行列 $P$\...
...られれば $A$ の固有値が求められたことになる。
\end{enumerate}\end{jproposition}

既に述べたように、固有値問題は代数方程式と等価であるから、 有限回の四則演算と冪乗演算で Schur 分解を求めることはできない。 しかし、上三角にすることをあきらめ、 一歩手前の Hessenberg 行列で我慢することにすると、 比較的計算量の少ない計算で済ませることが可能である。 その詳細は省略するが、 次のような基本的な直交行列による変換を繰り返すことで実現される。

(1)
超平面 $(u,x)=u_1x_1+u_2 x_2+\cdots+u_n x_n=0$ ($u=(u_i)$ は単位ベ クトル) に関する対称移動 (鏡映、鏡像とも言われる) を表わす $H=I-2u^T u$ (Householder 行列と呼ばれる)。
(2)
$x_px_q$ 平面内の角 $-\theta$ の回転を表わす $G=(g_{ij})$.

\begin{displaymath}
g_{ij}=
\left\{
\begin{array}{ll}
\cos\theta & \mbox{($(...
...ot\in\{p,q\}$)}\\
0 & \mbox{(それ以外)}
\end{array} \right.
\end{displaymath}

(Givens の回転行列と呼ばれる。)


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Masashi Katsurada
平成20年10月18日